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大槻ケンヂのサブカル本は「すべての人間のため」の書

青木るえか エッセイスト

 本屋で見つけてただちに買いました。大槻ケンヂの『サブカルで食う――就職せず好きなことだけやって生きていく方法』

 でもこの本、売れないだろうなあ。新書って、昔は岩波新書とか中公新書とか、ある種の学問書っていう感じだったけど今は「自己啓発書」で「ビジネス書」ですもん。それもお手軽な。自己啓発はともかくとして(精神世界系に関わってくるから)、ビジネスとサブカルって食い合わせ悪いですもの。

 新書のビジネス書って、経済書じゃなくて「いかに稼ぐか書」で、サブカルの人間は「自分がいかに世間の役立たずか鼻高々」だから稼ぐという発想にならない。いや、カネは欲しいんだけど。いろんなもの買いたいし。しかし、ビジネスとかは遠い地平線として眺めるだけにしておきたい。

拡大大槻ケンヂさん

 この本は大槻ケンヂ著であるから、もちろんビジネスの本ではない。新書ファン(ビジネスファン)はタイトルや装丁などからそのへんをかぎとって買わないだろうし、サブカル人は新書というもののビジネス書性をかぎとって買わない。

 というのは、ほぼ、自分の実感として言っています。というのも私はサブカル根性に首まで浸かったサブカル(に憧れる)人間だからです。

 しかし読んでみるとこれは、サブカル人だけではない、というよりもサブカルチャーなんかバカにしているようなメインストリーム系の人に読んでほしい本であった。

 語り下ろしのお手軽な本であるが、これは役にたつことがいっぱい書いてある。

 タイトルがまず、サブカルで食いたい、とくるので、サブカルじゃない人はたじろぐところだが、あんまりそこは気にしないで読み進めてほしい。

 サブカルで食いたい、というのは、つまり、なんでもいいから好きなことやってボチボチ暮らしたい、ってことです。その、好きなことがメインカルチャーでも、金儲けでも、プータローでも、なんでもいい、とにかくボチボチ暮らしていきたい。

 そのような考えは往々にして「甘いんだよ!」と言われるわけだが、別に甘くないですよ。サラリーマンのほうが考えは甘い。「オレは社会人だ、勤め人だ、サラリーマンだ」というだけで威張ったりできて、よっぽど甘い。

 大槻ケンヂは「サブカルで食う=好きなことやってボチボチ暮らす者」最大の成功者ではなかろうか。音楽と映画とエッセイと小説と病気。まさに「サブカルチャー保守本流」でトップを走る……が、何しろサブなので、トップでもたいしたことはない。それでも成功者は成功者。こういう成功者が何かを語る場合、いい気なタワゴトになることが多く(というか、ほとんどそう)、「ノンキな自慢話を聞かされてウンザリ」させられるので注意するべきだ。

 でもオーケンなら大丈夫。この人は、人間がいかにミジメで情けなく、いい加減な存在であるか、そしてそういう人間のひとりである自分、というのをわかっている。そのことに常におびえ続けて生きている人です。そんな、「ちょっと人気が出たからっていい気なこと言ってやがる」みたいなことは口にしませんよ。

 むしろシビアな話が多い。

 本を読んでいて「これは箴言」と思えるものがあるとページの端を折り曲げて目印にしておくのだが、この本はそれがいっぱいです。

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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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