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NHKの『未解決事件 オウム真理教』に強く文句を言いたい

青木るえか エッセイスト

 NHKの『未解決事件』はイカンと思う。

 第1回の『グリコ森永事件』の時は、あれは確かに未解決事件であったからいいが、こないだ放映した第2回の『オウム事件』。

 こいつがひどかった。

 これのどこが未解決なんだ。

 これぐらいはっきり解決している事件もないと思うが。そういえば、中核派系だったかどこだかの新聞で、麻原彰晃(松本智津夫死刑囚、以下「麻原」)は犯人じゃないとかなんとか……間違った、それは酒鬼薔薇事件だった。酒鬼薔薇くんが犯人じゃないって言ってたんだった。あっちの話はどうなってるんだろう。

 とにかく、オウム事件は解決している。冤罪の可能性は、世の中何があるからわからないということを考えても99.9パーセントないだろう。謎もない。ものすごくわかりやすい犯罪ではないか。しいて謎といえば、走る爆弾娘の菊地直子が今どこにいるのかわからないということぐらいで、でもそれは謎とは別のことだよな。……と書いてるそばから、相模原市内で身柄確保ですって。無事でよかった。『未解決事件』見ていろいろむなしくなったのだろうか。

拡大東京湾岸署に入る菊地直子容疑者=2012年6月4日

 なぜ麻原がああいうことをやったか。

 それが謎なのか? わからん。自分が麻原(の立場)なら、ああいうことをやろうと考えて、口に出しちゃって、まわりがやってくれちゃって、なんとなく自分も満足してゴー!って、ふつうに理解できる思考だと思う。やるかやらないかはともかくとして。

 よく、この手の事件、オウムにしろ酒鬼薔薇にしろ池田小学校にしろてるくはのるにしろ秋葉原にしろ、凶悪な殺人がらみの事件が起きると「犯人の心の闇」とか「理解できないその動機」とか言われる。

 それがわからない。

 こういう事件が起きるたびに「これを自分がやらかしたんでなくてよかった」ってことがまずアタマに浮かび、自分がやってた(or自分の子供がやらかした)ことを想像して冷や汗を流したりする。

 別に、自分がそういう闇の部分を持った人間だーと自慢したいとかではなく、というかそんなことは自慢にもならい、というか誰だって何かのはずみでそういうことをするハメに陥る……と言いたいだけの話です。

 今回も、元オウムの人とか周辺の人へのインタビューを聞いても、「だからどうした」としか思えず、麻原が武装化路線にチェンジしたキッカケになった説法の録音テープを初公開とかもしてたが、その内容にも新味がなく、しいて言えば、麻原も弟子たちも、ポアの話題になると案外腰がひけてるというか、ふつうの人間として「殺すのヤバイ」ってのが会話からも聞こえてきちゃうということで、だからこそ「ここは気を大きく持って、がんばってポアしよう!」と麻原も弟子もがんばってしまった、というあたりは、すごくよくわかるのですが。ふつうに暮らしてても、そういう心の動きってよくありますよ。とくに保守の皆さんが推奨するサラリーマン生活においては。

 このように、悲惨なことがあると自分のことのように考えてしまうもので、今流行りの生活保護問題についても、いつ自分がそういう立場(受けるとか、生活に困ってるから助けてくれろと親が言ってくるけど出したくないとか)になるかと思うと、というよりその時を生々しく想像してしまい、これもまた冷や汗が出てくるので、生活保護なんてものは欲しいという人に静かに黙ってくれてやってほしい、と思ってしまうのであった。

 ということで、オウムは未解決じゃない、ということで『未解決事件』で扱うのは看板に偽りありだ。

 まあ、そういう偽りはよくあることなので目をつぶる。しかし目をつぶってもなお、この番組はイカン。

 この番組を見ていた江川紹子さんが ・・・ログインして読む
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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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