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「AKBの推しメンは誰ですか?」と訊かれて、私は……

小田嶋隆 小田嶋隆(コラムニスト)

 「推しメンは誰ですか?」

 と、いきなり訊かれる。

 意味がわからない。

 先方は、こっちが当然「推しメン」を決めていると思い決めていて、それが誰であるのかを尋ねているつもりらしい。

 「えーと、そのオシメンというのはもしかしてAKB48の関係のなにかですか?」

 「そうです。イチオシのメンバーが誰かということです」

 なるほど。

 「いません」

 「は?」

 「だからいません」

 ケンカを売っているつもりは無いのだが、なんとなく場の空気が悪くなる。

 せっかく、気のおけない若い人が、友好のしるしに、当たりさわりのない話題を振ってくれたのに、それに対して年長者である男が、卓袱台を返すみたいな対応を示したという感じの、いやなムードになっている。

 「おきらいですか?」

 「いや、好きとか嫌いとか言う以前に、あの年頃の女の子がああいう感じで群れてるのを、私のような年齢の人間に見分けろというのがそもそも無茶な話だってことです」

 「おわかりにならない、と?」

 「たとえば、おたくがモンゴルを旅行していたとする。で、ウランバートルの空港で知り合った現地の人間と親しくなったとします」

 「何の話ですか?」

 「いや、だからそのモンゴルで友達になったなんたらドルジさんだとかいうおじさんに写真を見せられたと思ってくださいよ」

 「わかりました」

拡大おじさんには誰が誰だか……。総選挙で16位までの選抜メンバー=2012年6月6日、日本武道館

 「で、写真を見せながら先方は言うわけです。どの子が一番美人だと思いますかって」 

 「なるほど」

 「あなたは答えられますか?」

 「そりゃ、答えますとも。写真見て、自分がきれいだと思う女の子の顔を指差しますよ。隠したって仕方がないじゃないですか」

 「でもね。そのモンゴルのおじさんがあなたに見せてる写真は、彼の財産であるところの、48匹の羊の写真ですよ。ヒツジ。あのメエメエ鳴くヒツジです」

 「……は?」

 「だから、ヒツジ・フォーティーエイトなわけです」

 「……だとしたら、美人もへったくれもないじゃないですか。羊なんて、みんなおんなじ顔してるんだから」

 「でしょ?」

 「ですよ」

拡大ヒツジ・フォーティーエイト?

 「だから、私にとっても、それは同じことで、見たこともない女の子の顔を48個並べられても区別がつかないわけです。というよりも、比べてみるということが、こっちにとっては大きな負担なわけですよ」

 「……」

 もちろん、私とて、若い人たちの気軽な質問に対して、いちいちこんなふうに突っかかっているわけではない。

 でも、

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筆者

小田嶋隆

小田嶋隆(おだじま・たかし) 小田嶋隆(コラムニスト)

1956年、東京・赤羽生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、食品メーカーに就職するも8ヶ月で退社。その後、テクニカルライターなどを経て、現在は隠者系コラムニストとして活躍中。さいたまスタジアムに足繁く通う筋金入りの浦和レッズ・ファン。著書に『イン・ヒズ・オウン・サイトネット――巌窟王の電脳日記ワールド』(朝日新聞出版)、『サッカーの上の雲――オダジマタカシサッカ~コラム大全』(駒草出版)、『テレビ救急箱』(中公新書ラクレ)などがある。現在、日経ビジネスオンラインで連載中のコラム「ア・ピース・オブ警句」をまとめたコラム集『地雷を踏む勇気――人生のとるにたらない警句』(生きる技術!叢書、技術評論社)が好評発売中。近刊に『その「正義」があぶない。』(日経BP社)。

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