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しゃべりがダメな小沢一郎さんを見るのはつらい

青木るえか エッセイスト

 テレビとか記者会見で感じの悪い対応をしてしまう人ってのは、やはり人間的にも世間的にも鍛えられていないんだろうなあと思うんだが、しかしそういう場面に出てくるのはたいがい企業のトップであり、そういう人はさんざん社会と会社にもまれて鍛えられてトップにのぼりつめたんではないのだろうか。

 ヤンキー高校生とか、無職ニートとかが、アゴあげて「んあ?」とかやってるならむしろ安心感があったりするが、社長とかが慇懃無礼に筋の通らないことを言ってたりするといちいち衝撃を受けるのは、やはり社長に対する幻想があるのだ。日本の社長はエライもんだと信じる、宮尾すすむ的メンタリティが抜けない。

 そんな社長幻想を叩き壊す昨今の社長会見事情である。

 東京電力の勝俣会長(当時)会見など(この人は会長だったが、社長よりもっとエライんだからさらに問題は深刻だ)、「こんなものを電波で全国に流したりしては、東電も評判落とすし、何よりも勝俣さん本人が日本全国の見知らぬ人からヒソヒソ言われたりするようになるんではないか」と、怒りより先に心配してしまった。誰か、まわりにいる人が注意しないのかと。これぐらいの人なら秘書なんか何十人単位でいるだろうに。秘書ってそういう仕事はしないの?

 先日の『クローズアップ現代』(NHK)で捜査の可視化について語っていた検事総長もなかなかすごかった。いろいろ言ってたがつまるところ「検察の都合のいい部分のみ可視化してもらっても構わない」ということで、組織の論理を堂々と主張する場とはいえ、もう少し言い回しを考えたほうが。

 私が強く疑問に思うのは、番組に出る前に「主張するべきことは大いに主張してくださいよ総長!(総長とは呼ばんか)……でも視聴者に反感買わないように気をつけてください、言い方ひとつで印象はぜんっぜん違いますから!」と注意するヤツはいなかったのかってことだなあ。まあ、こうやって「検察のホンネ」がバレるのはいいことかもしれない。

 大津のイジメ事件における、教育委員会の木で鼻をくくったような会見もすごかったなあ。もうちょっとヘコヘコしときゃいいものを、なんでああ威張るのか。昔、国勢調査の時に総務庁統計局(当時)というとこでバイトをしたが、でかい部屋に大量の役人さんたちがいて、その中でただ一人、課長補佐がキャリアの人なのだったが、ものすごく腰が低くて私のような者にまでニコニコペコペコしてたというのが忘れがたい。

 エライ人ってのは実はそういうもんなのだ、と思っていたけれど、若い頃にそうやってペコペコしてた反動で、エラくなった時にあんなに威張るんだろうか。あの時の課長補佐は根っから腰が低い感じだったが……。

 その点、政治家が感じが悪いのは、当然のように思われている。ちょっとぐらい暴言ぽいことがあったほうが人気が上がるぐらいだ。石原慎太郎とか橋下徹とか、懐かしの渡辺美智雄も「黒人はアッケラカーのカー」とか暴言……というか失言というか失礼な発言を繰り返していた。暴言系は、「よく言ってくれた!」というご支援の声まで出てくる。週刊新潮なども後方支援に回る。

拡大松本龍復興担当相(当時)の「暴態度」?

 でも、たまに「態度が悪い代議士」が登場すると、いきなり「世論が怒り一色」になるわけだけれど。松本龍(復興担当大臣)がそれだった。

 人は、発言内容よりも、発言態度を問題にするんですね。暴言は人気出るが、暴態度は人気を下げる。「なんだその態度は!」ってのはケンカの第一声だったりするので、もう理性ではない嫌悪感があるのだろう。そういえば洋画など見ていて「なんだその態度は!」という台詞ってあんまりないような気がするけれど……そもそも洋画をそれほど見ているわけでもないので、「態度の良し悪し」を重視するのは日本人固有の問題だ、とかいうのはやめておいたほうがいいだろう。

 それはいいとして、小沢一郎は態度の悪い政治家というような印象が多くの人に共有されている。

 あの、愛嬌のない、いわゆる「ワルそうな人相」と、「暴言はもちろん、発言すらあまりしない。どちらかといえば、怒鳴り散らすんではなくて、黙り込むことによって相手を威圧する」という態度なのが、「小沢ってイヤなやつ」と思わせる理由だろう。

 私としては、地震のあと、なんとなく消息を消して、ずいぶんたった後に「私がトップだったらもっとうまくやってた」みたいなことを言って菅さんを批判してるのを聞いた時に「アンタそれ、そんなことよく恥ずかしげもなく言いますな」と呆れ怒ったことはありますが、ああいうタイプの政治家の悪相はけっこう好きなほうで(小沢さんの他には、矢野絢也とか。悪相でハゲではないタイプ)、人が言うほどは嫌いではない。

 しかし、どうも、動くタイミングが劇悪の感は否めない。今回の新党結成も、いかにも「あたりを見回したあげく出遅れた」というか。国民の生活が第一、か……。どうも、松戸市役所の『すぐやる課』を思い出すネーミングだ。人が言うほど悪い党名とは思わないけれど(こなれは悪いが、自由党とか新党大地とかそんなんよりは私は好きです)、注目浴びた挙げ句のこれは、そりゃあ叩かれよう。

 この、『国民の生活が第一党』発表の会見をテレビで見ていて、小沢一郎が気の毒になった。

 この人、ほんとに、しゃべるのがダメだ。

 喋りに特徴のある政治家、として思い出すのが ・・・ログインして読む
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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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