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フェンシングで日本人に負けた西洋人は泣くのだろうか?

青木るえか エッセイスト

 オリンピックのたびに不思議というか「なぜ」と思ってしまうのが柔道についてで、毎回毎回、男子選手が負けるたびにミーミー泣いているのもどうかと思うし、指導者や柔道連盟は「押し入れにでも入って泣いとけ!」と叱らないのか、というのも謎だし、「なぜ重量級になればなるほど泣き声のトーンが高くなるのか」も謎だ。

拡大柔道着はどうしてもこうなる(男子90キロ級で銅メダルを獲得した西山将士選手)

 それよりも気になるのが、「柔道着はどうしてはだけるのか」だ。そして「なぜ女子の柔道着ははだけないのか」。男子と女子では、柔道着のエリをつかむ時のルールとかが違うんですか。礼を重んじる競技だっていうなら、柔道着がはだけた段階で負けにしてほしい、と言いたいぐらい、あの男子柔道の、前のはだけぶりは見苦しい。

 ……などということは所詮、柔道を知らないし興味も無い、五輪の時だけテレビで見かけたおばさんが言ってるようなことで、柔道界でも聞き飽きていることだろう。でも、柔道着問題については五輪じゃない時でも、ふと思い浮かんで「なんでああはだけるかな」とイライラすることはあるけど。

 私が柔道に抱いている疑問の最大のものは、外国人選手についてだ。

 なんで柔道なんかやるんだ?

 いや、まあ、そこは好き好きなので、やってる人に「やめろよ」とか言う気はない。五輪に出るほどまで強くなるのはすごい。どんどんやってほしい。

 私の疑問は「外国に住んでいて、柔道をやろうとするまでの道筋」だ。

 格闘技にもいろいろあるだろうに、なぜ、極東発祥の、なんだかキモノみたいなものをダラダラとだらしなくはだけさせて組み合っている競技をやろうとするに至ったかだ。 

 近所に「日本帰りのじいさんがやってる柔道の道場があった」とか、『柔道一直線』の再放送を吹き替えで放映してたとか(ギリシャあたりではありそうな話ではないか)、たぶん選手個人に聞いてみれば、つまらない、あたりまえの日常みたいな「柔道へのきっかけ」があるだけだろう。現実なんてつまらないものです。

 でもこれ、自分に置き換えて考えてみても、すごく細い、蜘蛛の糸をのぼって天にたどりつくぐらい、「ない選択」ではなかろうか。自分の住んでる町内に「ノルウェー発祥の、試合の時はバイキングみたいなツノはえた帽子をかぶって、足だけ使ってやる格闘技(いまテキトーに考えた架空の競技です)」の道場があったとして、そこに通いますか、あなた。通う人もいるだろうけど、その数少ない通う人のうちで、五輪に出るまでに強くなる人がいったい何人いるというのか。

 ここで思うのは、五輪柔道で日本が負けると「柔道の本場である我が国が……」とか男泣きに泣いたりするやつが登場することだ。

 ありがたいではないか。

 外国人が柔道を選んでくれる。

 ふつうなら柔道みたいな、見るからに野蛮な、それも遠い極東の島国発祥の格闘技なんか、やってくれませんよ。東京五輪でヘーシンクに負けてショック、というのは、日本人が柔道で外人に負けたというよりも、外国人が柔道やってくれてありがとう!の方向で考えられなかったものか。

 今回、フェンシング団体で日本が銀を取った。これをテレビがあまりにもリプレイしまくるのでつい見ていたところ、相手チーム(どこの国かわからない。でも西洋)の選手が面(というんだろうか)をはずして額の汗をふく、というシーンがあった。

 この選手がキレイでしてね。

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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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