古賀太
2012年08月16日
その点、現在、東京で展示されている2点は、まさに代表作だ。国立西洋美術館(西美)で9月17日まで開催中の「ベルリン国立美術館展」では、傑作の誉れ高い《真珠の首飾りの少女》が展示中で、同じ上野公園内の東京都美術館(都美)の「マウリッツハイス美術館展」では、有名な《真珠の耳飾りの少女》がフェルメール初期の《ディアナとニンフたち》と共に、同じく9月17日まで見られる。
考えてみたら、2011年から京都、仙台で開催後、東京のBunkamuraザ・ミュージアムで年末から今年3月まで開催された「フェルメールからのラブレター展」では、修復されたばかりの傑作《手紙を読む青衣の女》を含む3点が展示されて、東京では26万人を集めた。
ついでに言うと、銀座では8月26日まで「フェルメール・センター銀座」なる雑居ビルの特設会場で、「フェルメール 光の王国展」と称して、複製画37点の展覧会が有料で(1000円!)開催されている。
興味深いのは、上野で開催されている2つの「○○美術館展」のフェルメールの作品名が酷似していることだ。一方は《真珠の首飾りの少女》、もう一方は《真珠の耳飾りの少女》。さっと読むと同じに見えるが、「首」と「耳」の一字だけが違う。
さて、「首飾り」と「耳飾り」のどちらの「少女」が観客を集めているか各館に聞いてみたら、びっくりする数字が上がってきた。ともに8月12日(日)までで、西美は合計20万3787人で1日平均3774人だが、都美は2週間以上遅く始まったにもかかわらず、計35万7702人で1日平均9172人。この倍以上の差はいったいどこから来たのだろうか。
調べてみると、西美の「ベルリン国立美術館展」の主催は、同館のほかにTBSと読売新聞社、都美の「マウリッツハイス美術館展」は同館と朝日新聞社にフジテレビ。この両館のように大量動員が期待できる美術館では、通常マスコミの文化事業部が共催に加わり、経費の大半を負担して、事業的な収益を期待する。
「首飾り」読売対「耳飾り」朝日の対決だが、読売が日テレでなくTBSと組み、朝日がテレ朝ではなくフジと組んでいるのも興味深い。
さてこれから「耳飾り」が「首飾り」に圧勝した理由を探りたい。
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