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東京・上野「フェルメール」戦争――「耳飾り」が「首飾り」に圧勝の理由

古賀太

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

 20年ほど前から世界的にフェルメール・ブームが起きたが、今年の日本はそれが頂点に達したと言えるのではないだろうか。2008年に上野の東京都美術館で開催された「フェルメール展」には7点が出品されたが、一番期待されていた《絵画芸術》は出品が取りやめになり、7点とも地味な印象が残った。

拡大東京都美術館で入場待ちに並ぶ人々=撮影・筆者

 その点、現在、東京で展示されている2点は、まさに代表作だ。国立西洋美術館(西美)で9月17日まで開催中の「ベルリン国立美術館展」では、傑作の誉れ高い《真珠の首飾りの少女》が展示中で、同じ上野公園内の東京都美術館(都美)の「マウリッツハイス美術館展」では、有名な《真珠の耳飾りの少女》がフェルメール初期の《ディアナとニンフたち》と共に、同じく9月17日まで見られる。

 考えてみたら、2011年から京都、仙台で開催後、東京のBunkamuraザ・ミュージアムで年末から今年3月まで開催された「フェルメールからのラブレター展」では、修復されたばかりの傑作《手紙を読む青衣の女》を含む3点が展示されて、東京では26万人を集めた。

 ついでに言うと、銀座では8月26日まで「フェルメール・センター銀座」なる雑居ビルの特設会場で、「フェルメール 光の王国展」と称して、複製画37点の展覧会が有料で(1000円!)開催されている。

 興味深いのは、上野で開催されている2つの「○○美術館展」のフェルメールの作品名が酷似していることだ。一方は《真珠の首飾りの少女》、もう一方は《真珠の耳飾りの少女》。さっと読むと同じに見えるが、「首」と「耳」の一字だけが違う。

拡大《真珠の首飾りの少女》1662-1665年頃 ベルリン国立絵画館 (C)Staatliche Museen zu Berlin

 さて、「首飾り」と「耳飾り」のどちらの「少女」が観客を集めているか各館に聞いてみたら、びっくりする数字が上がってきた。ともに8月12日(日)までで、西美は合計20万3787人で1日平均3774人だが、都美は2週間以上遅く始まったにもかかわらず、計35万7702人で1日平均9172人。この倍以上の差はいったいどこから来たのだろうか。

 調べてみると、西美の「ベルリン国立美術館展」の主催は、同館のほかにTBSと読売新聞社、都美の「マウリッツハイス美術館展」は同館と朝日新聞社にフジテレビ。この両館のように大量動員が期待できる美術館では、通常マスコミの文化事業部が共催に加わり、経費の大半を負担して、事業的な収益を期待する。

 「首飾り」読売対「耳飾り」朝日の対決だが、読売が日テレでなくTBSと組み、朝日がテレ朝ではなくフジと組んでいるのも興味深い。

 さてこれから「耳飾り」が「首飾り」に圧勝した理由を探りたい。

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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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