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原発事故、官邸の証言に関する衝撃的な2冊

鷲尾賢也

鷲尾賢也 鷲尾賢也(評論家)

 政府、国会、民間、そして東電と、今回の原発事故に関する4つの事故調査委員会の報告書がでそろった。一方で、原発事故に直面した官邸側はどうだったのだろうか。

 このところ続けて、福山哲郎『原発危機 官邸からの証言』(ちくま新書)木村英昭『検証 福島原発事故 官邸の100時間』(岩波書店)が刊行された。前者は、事故当時の官房副長官。現場での自分のメモ・ノートをもとにした証言である。後者は、菅直人首相以下、官邸の多くの関係者(政治家や官僚)や専門家、東電幹部を克明に取材し、3月11日からほぼ5日間の官邸を描いたドキュメントである。

 それぞれ未曽有の大事故に対処しなければならなかった当事者たちの危機感がよく伝わってくる。読みながら、はらはらしてテレビにくぎ付けになった日々が甦ってきた。NHKを中心にしたテレビの解説では、メルトダウンはないとずっといっていた。

 しかし刊行された証言を読むかぎり、おそるべき事態(首都圏全体の避難の可能性)の一歩手前であったことがよく分かる。一方で、国民にとってはやることなすことすべてが不手際のように思えた。

 枝野幸男官房長官の「ただちに人体に影響を及ぼす数値ではない」という発言も評判が悪かった。何かを隠しているのではないか、と疑心暗鬼になってしまったことも事実であった(その点でいえば、メディアの報道も心許なかった)。

 ただ、今回、この2冊を読むと、官邸に何の情報も上がっていなかったことにあらためて背筋の寒くなる思いがした。ほんとうに情報過疎の状態に官邸が置かれていたことに驚く。

 首相自身が、直接、情報を現場に求めることからスタートしている実態が明らかになっている。つまり官僚組織がまったく力を発揮していない。とりわけ、保安院はひどすぎた。事故の把握もできない。まして、事故をどうするかなどについてはお手上げの状態であった。何を聞かれても、ほとんど答えられない。また、アドバイスする立場の原子力安全委員会の班目春樹委員長も、まことにたよりなかった(というより、こういう事故を想定していないので、どうしていいかわからず沈黙してしまっている)。

 さらにあきれるのが東京電力である。福山も、木村も、その点についてはもっともきびしい。当事者意識がまったく感じられない。巨大事故をおこしているのもかかわらず、情報を隠そうとする。

 現在、東電に残されていたテレビ会議映像の公開が論議になっているが、 ・・・ログインして読む
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筆者

鷲尾賢也

鷲尾賢也(わしお・けんや) 鷲尾賢也(評論家)

1944年、東京生まれ。評論家。慶応義塾大学経済学部卒業。講談社入社。講談社現代新書編集長、学芸局長、取締役などを歴任。現代新書編集のほか、「選書メチエ」創刊をはじめ「現代思想の冒険者たち」「日本の歴史」など多くの書籍シリーズ企画を立ち上げる。退社後、出版・編集関係の評論活動に従事。著書に、『編集とはどのような仕事なのか――企画発想から人間交際まで』(トランスビュー)など。なお、歌人・小高賢はもう一つの顔である。小高賢の著書として『老いの歌――新しく生きる時間へ』(岩波新書)など。2014年2月10日、死去。

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