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iPS細胞の森口さんは日本を破壊すべく派遣された刺客だったって?

青木るえか エッセイスト

 朝ドラ『純と愛』と「沖縄問題」について論じようと思ったのだが、やはり今回は「iPS細胞の森口さん」の話だろう。現在、「iPS細胞の森口さん」なんて言ってはiPS細胞が怒り出すような事態となっているが。

 このニュース(=森口さんが手術を6個も成功させた!という読売の記事じゃなくて「コレってもしかしてヘンかも」と世間が気づき始めた時点をもってニュースとします)は私にとっては「久々に心を動かされるニュース」でした。

 もっと端的にいえば「感動する」というのがいちばんしっくりくるのだが、それだと誤解を招きそうだ。尊敬するゲイライターのサムソン高橋がこのニュースについて「いたたまれなさすぎて見てられない」と発言しておられて、「ああ、それもすごく私の気持ちを表している」と思った。サムソンさんはさすがだ。

 いたたまれない。実に。

 旧石器のゴッドハンド氏の時もそうだったが、こういう事件が起こった時にどう思うか、というのはけっこう重要なことだ。私が、人を判断する上での重要であるという、個人的なことなんだけど。

 こういう事件があった時に、

 「ウソツキ! 許せない!」

 と、ただちに叫ぶ人とは相容れない。

 森口さんやゴッドハンド氏は自分だ、と思う人でなければ信用できない。まあ、別に私に信用されなくてもいいだろうけど、私は「ウソツキー!」と叫ぶ人とは友だちにはなれない。

 記者に追い詰められてる森口さんの黙りこくる姿を見て、思い出しましたね、小学生の頃、しょうもないすぐバレるウソをついて、それを学級会とかでクラス全員に追求された時とか、親についたミエミエのウソがバレた時に追い詰められた時とかの、あの胸の苦しさ。森口さんを見ていてその時のことを思い出さないのでしょうか大人の皆さん。

 そんな思い出がないとは言わせない。あの会見場の記者、全員に尋ねたい。

 思い出すからこそ、カサにかかって責め立ててるのか? あの頃のオレのバカー!とばかりに責め立てるのか。それならわからんではないけれど、どうもそんな感じがしない。オレは正義を行使してるんだ!というような偉そうな口調である。

 また、森口さんがそういう正義をますますかきたてるような、記者の嗜虐心をあおるような態度。そうなっちゃうんです。よくわかります。自分もそうだった。

 この件に限らず、いろいろな事件で犯人と目される人が登場するといっせいに「許せない!」「信じられない!」というのが私にはもっと信じられない。私なんか、事件があるとまず「それをヤッたのが自分じゃなくてよかった」と思いますもの。被害者になるよりも加害者になるほうがコワイ。そっちのほうが地獄だ。

 その恐怖があるから、なるべく自分が犯罪に手を染めないように必死で気をつけているわけで(常にそんなことばっか考えているわけじゃないけども。でも意識下にはあるという状態)、これが「そんな凶悪事件起こすなんて!」という人のほうが、そういう状況に陥ったあげく「信じられない!」と叫んだりするのではないか。

 猟奇殺人などは、なかなかそういう気持ちになるのが難しい面もあるけれど、今回の森口さんの件などは、「自分が森口さんだったら」ということを想像するのは簡単だ。ぜったいみんな、身に覚えがある。こんな大それたことじゃなくても、森口さんの気持ちに寄り添うことは可能。動機なんかどうでもいい。とにかく、追い詰められ、突き上げられた時のあの気持ちを共有できればいい。

 いやしかし、驚いたのが2ちゃんねるで、 ・・・ログインして読む
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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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