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 これまで4回にわたって、TIFF(東京国際映画祭)の問題点を指摘してきた。会場、ディレクター制、国際映画祭の本来の目的や世界初上映の意味、そしてセクションの構成。今回は最後なので、これからどう変えてゆくべきかを、具体的に提案する。

 実を言うと、まずTIFFのチェアマンという制度をやめることを提案しようと思っていた。現在のようにチェアマンの下に隠れたようにプログラマーが3人いるのではなく、運営母体であるユニジャパンがディレクターを指名し、そのディレクターが作品選考も含めた運営全体を任される構造が、国際映画祭には必要だという考えだ。

 これまで述べたように、TIFFの最大の問題は、会場や運営が全く内向きで国際映画祭の体を成していないことにある。いかにプログラマーががんばっても、しょせん「比較的レベルの高い作品が集まった」程度にしかならない。

 ところが10月28日のTIFFのクロージングの挨拶で、依田巽チェアマンは後継者を何の予告もなく、突然発表した。角川書店取締役相談役の椎名保氏である。従って、この文章は椎名新チェアマンへの注文となる。

 まず、会場や会期も含めてこれまでのTIFFの常識を洗い直すところから始めてほしい。会場は本来なら関係者を隔離するような、どこか都心から少し離れた場所が望ましい。

 東京都の補助金が出ている以上、今さら横浜というのは難しいだろうが、今年TIFFCOMが開催されたお台場などは候補の一つだろう。そうでなければ有楽町の国際フォーラムを中心に、周辺の映画館やフィルムセンターを巻き込むほうが、六本木のシネコンより何倍も形になるはずだ。

拡大審査員や受賞者と「映画の力を今」と拳を挙げる依田チェアマン=撮影・筆者

 会期についても、10月30日付の「朝日新聞」朝刊に「映画祭シーズンの後で、秀作が出がらした時期に開かれるのは、各社の正月映画の宣伝に都合がいいから」と書かれていたように、もし本物の国際映画祭を狙うなら、今の時期は悪すぎる。

 もちろん連載(3)で述べたように、コンペ部門を作らず、国内観客向けの映画祭にする方向もありうる。トロント国際映画祭のように、コンペがなく観客向けに始まった映画祭でも、北米での大きな映画祭ということで、近年とりわけビジネス面で存在感を増している例もある。

 しかしあくまで国際映連認定のジャンルを特定しない13大映画祭として、カンヌやベルリンを目指すのならば、会期や時期と同時に、現在のセクション構成を根本的に考え直す必要がある。

 最も大事なのは、従来の「特別招待」という国内向けセクションを止めることだろう。これは誰がディレクターになっても必要だ。確かに総予算が20億円あるカンヌに比べて、7億円弱しかないTIFFが国内映画会社からお金を集めるには「特別招待」は便利かもしれない。

 しかしこの「麻薬」を絶たないと、TIFFは永遠に内向きのままだ。国内映画会社やアメリカのメジャーのお金がなくても、予算の範囲でできることをやる覚悟が必要だ。

 これから先のセクション構成は新しいディレクターが決めることだが、せっかくなので私案を述べておきたい。 ・・・ログインして読む
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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

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