2012年11月13日
高揚感に欠けたのはエンターテインメント業界も同じ。熱心な民主党びいきのマドンナが、投票前のライブで「オバマに投票を」と呼びかけたら、ブーイングが起きる場面もあった。
4年前は、オバマの集会にブルース・スプリングスティーンやスティービー・ワンダーら有名ミュージシャンがこぞって登場し、支持を訴えた。オバマ支持のミュージシャンが歌ったコンピレーションアルバム「YES WE CAN:VOICES of a GRASSROOTS MOVEMENT」なんてのもあったのに。
今回の最大の争点は経済問題、なかでも失業だった。人は、カネがなくても生きていけるが、仕事がなくては生きていけない。失業手当や生活保護があるから、飢え死にしない……なんて問題ではない。
他者とかかわり、他者の承認を受け、自分で自分を赦すことができる。その唯一の手段が、労働だ。人とかかわらなければ生きていけないのが、ヒトという生物なんだ。銭カネじゃない。「尊厳」の問題なんだ。
選挙戦でのロムニーの敗因もきっとそこ。「こいつにやらせても、仕事は増えない」と、有権者が(たぶん正しく)判断したんだろう。
この視点は日本の新聞では欠けていたように思うけれど、経営者として大成功したというのがウリのロムニーだが、結局、彼が大もうけしたプライベート・エクイティ・ファンドって、税法上の穴をめざとく見つけて、有利な企業を買収し、ときには従業員も大量解雇して、会社を“再建”(?)し、そしてまた売り払ってもうけようという商売。雇用に貢献してない。
だから、オバマの勝利の美酒も、4年前とは味が全然違う。アメリカの夢をオバマに託すという盛り上がりはない。若者も貧困層も、「よりまし」な候補を消去法で選んだというところではないか。大人気だった大統領の、2期目に遭遇する、冷淡と絶望。
この図式、ある著名な大統領と似ている。
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