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尼崎連続事件がいまひとつ「盛り上がらない」理由

青木るえか エッセイスト

 尼崎の事件がどうも自分としては盛り上がらなくてつまらない思いをしている。あれだけ沢山の方が亡くなった事件で面白いだの盛り上がるだのいうのはどうかと思うが、しかし、あれだけの規模の事件にしては、世間でも盛り上がりに欠けるのではないだろうか。

 今までにワイドショーを賑わせた事件を思い返しても(オウムとかロス疑惑とか和歌山カレー事件とか)、賑わう理由は被害者の数だけではない何かがあるようだ。

 今、考えられる「尼崎事件がいまひとつ盛り上がらない理由」はこんな感じか。

★人物関係がワケわからなすぎる。

 これは「そんなことはない」と思う。

 確かに義理の弟の嫁とか弟の妻の父とかただの他人とかが入り乱れているが、ここに暴力とか監禁とか殺人とかが入るから「ワケがわからない」となるけれど、それは「暴力や監禁や殺人をする気持ちがわからない」だけであって、顔の広い人、いろんな人とやたらべたべたつき合う人、というのはいる。学校でも職場でも町内会でもゴチャゴチャした人間関係なんてのは山ほどある。

★犯人(と目される人)がすでに逮捕されちゃっている。

 これは大いにありそうだ。

 オウムにしろロス疑惑にしろ和歌山カレーにしろ、ワイドショーで盛り上がるのは「こいつが怪しい」と目星をつけられた人物にレポーターや記者がたかって「どうなんですか●●さん!」とか迫って水かけられたりする、という画面が必須。

 そのような状態が2週間から数ヶ月続く。そしてお茶の間の皆さんが「早く逮捕しろ!」と熱くなる。コレですよ。

 その点、今回の主犯と目される角田容疑者は、事件が明らかになった時にはもう警察の留置所の人になっちゃっていた。角田容疑者の顔写真がいつまでも出てこなかったり、出たけど別人だったりした、というのも、「警察が出し惜しみしていた」せいであり(ですよねえ?)、警察相手に「写真出せよ!」とレポーターが押し寄せて放水されるということはありえず(ワイドショーは権力には弱い)、視聴者も警察相手には無意識に「しょうがない」という気持ちがあり積極的にタテつかないので(庶民はもちろん権力に弱い)、間違い写真を出した新聞社へ文句を言うだけに終わった。

 いやあ、ここぞとばかりに新聞社、叩かれてましたなあ。新聞のポカって、みなさん本当に好きですよね。

★事件を大きく報道しないのには韓国だか朝鮮だかの陰謀がある。

 これはネットで囁かれている説。

 「ネットで囁かれ」た瞬間にもうマユにツバつけたくなってしまう昨今ですが、そこに韓国朝鮮中国という文字が入るとゲンナリ度アップ。ええとつまり、この事件の主犯の角田容疑者の関係者に在日韓国だか朝鮮の人がいる、在日韓国朝鮮人の犯罪を隠蔽したいのでマスコミはこの事件をそれほど取り上げない。

 またですか。森口教授事件も韓国朝鮮の陰謀だったらしいが、これもですか。もう、この手の「韓国朝鮮の手下のマスゴミ(←この言葉を使うやつもその瞬間から信用できない)に日本の大衆は操られている」ということを言いたがる人間は、私のような「そんなことは聞いた瞬間信用しない」という人間を多く生み出して、ほんとうに韓国朝鮮が日本を支配しようとした時に「ウソウソ信じな~い」といわせるための、韓国朝鮮の工作員ではないか、と言いたいぐらいである。

 どう考えても、この事件において、在日韓国朝鮮人が犯人の係累にいることで、この事件をなかったことにしようなんていう話はバカバカしくて聞いちゃいられない。

★事件が陰惨すぎて語る気が失せる。

 そうなんでしょうか。これ、そんなに陰惨な事件なんでしょうか。 ・・・ログインして読む
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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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