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(1)生誕100年 ジャクソン・ポロック展(東京国立近代美術館ほか)

(2)シャルダン展(三菱一号館美術館)

(3)セザンヌ――パリとプロヴァンス展(国立新美術館)

(4)近代洋画の開拓者 高橋由一(東京芸術大学美術館ほか)

(5)すべての僕が沸騰する 村山知義の宇宙(神奈川県立近代美術館葉山館ほか)

 2012年は例年にもまして、マスコミの企画する○○美術館展が多かった。「北京故宮博物院展」「ボストン美術館展」(東京国立博物館)、「大エルミタージュ美術館展」「リヒテンシュタイン(美術館)展」(国立新美術館)、「プラド美術館展」「ベルリン国立美術館展」(国立西洋美術館)、「マウリッツハイス美術館展」「メトロポリタン美術館展」(東京都美術館)、「大英博物館古代エジプト展」(森アーツセンターギャラリー)等々。

 こう書き写すだけで憂鬱になってくる。○○美術館展の弊害については既にここに書いたので繰り返さないが、要するに経営の厳しいマスコミは金儲けに走り、集客が欲しい美術館がそれに頼るという構造だ。

 そんななかで、いくつかの珠玉の個展が光っていた。いい個展をやるにはコンセプトを明確にし、いくつもの他館から作品を借りる必要がある。その手間をかけた美術展は、見応えがある。

拡大ジャクソン・ポロック「インディアンレッドの地の壁画」(1950年、テヘラン現代美術館蔵)

 今年一番は文句なく(1)だろう。1930年代の初期から絵画とは何かを問い続けた軌跡を内外の美術館の作品で追いながら、1950年の《インディアンレッドの地の壁画》(テヘラン現代美術館蔵)にたどり着いた時、本当に足元が震えた。

 そしてさらにそれを壊す晩年の苦悩。44歳で交通事故で亡くなった事実を読んで、改めて愕然とした。そのアトリエの再現も良かった。点数は60点余りと多くはないが、日本に初めて来た2点を借りるなど芸も細かい。十分に空間を取って照明を工夫した展示も特筆すべきだ。

 これを企画した東京国立近代美術館は意欲的な展覧会が多かった。「吉川霊華展」は、私は実は画家の名前さえ知らなかったが、明治後半から昭和初期にかけて活躍した「線の魔術師」をまさに発見した思いだった。

 同じ美術館でも、開館60周年記念の「美術にぶるっ!」展は、なぜか不満が残った。なぜかもの足りない。少なくとも1階も使うべきだと思った。そこで開かれていた「実験場 1950s」展自体は興味深いのだが。

 いずれにしてもこの美術館は、5年前に同じ法人内に六本木の国立新美術館ができたし、東京都美術館も今年はリニューアル・オープンしたので、マスコミの大型展を引き受ける必要も需要もなくなり、学芸員が知恵を絞り、時間と手間をかけた美術展をどんどん開いているようだ。

 発見という点では、(2)もそうだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

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