2012年12月19日
夏にお台場で開かれたTOKYO IDOL FESTIVALには111組732人のアイドルが参加、前年の57組396人から倍増した。
さらに夏のAKB48による東京ドーム3日間公演、ももいろクローバーZの西武ドーム公演などは、ほんの数年前を考えれば信じられない。この西武ドームを埋め尽くした3万7000人が帰りの西武電車にすし詰めになり、この客がすべてももクロのファンなんだと考えると感慨深かった。
1位)ゆび祭り(6月26日、日本武道館)
AKB48からHKT48に移籍した指原莉乃プロデュースと銘打った、空前絶後の「アイドル関ケ原の戦い」。指原、渡り廊下走り隊などのAKB系ユニット、ももいろクローバー、東京女子流、アイドリング、スーパーガールズ等のほか、これまで「対外試合」に消極的だったハロー!プロジェクトのユニット「Buono!」も登場し、プロレスの団体対抗戦を思わせた。
客の声援は西武ドーム公演を控えたももクロが圧倒的だったと思う。最後はAKB48の「ヘビーローテーション」を全員で歌った。ハロヲタの私としては、Buono!の夏焼雅がセンター付近で、でも指原らの後塵を拝して歌う姿が「軍門に下った」感は否めず、君が代を歌わせられる日教組の組合員のように見えて、お前は屈辱を感じないのか、なぜ笑顔で歌う! と思ってしまったのであった。狭量ですみません。
2位)小泉今日子(8月23日、ビルボード東京)
今年は工藤静香がデビュー25周年、松本伊代と小泉今日子がデビュー30周年を迎えそれぞれ久しぶりのコンサートをした。この中では、私は小泉に複雑な思いがある。ライバル紙の書評委員だから、だけではない。
彼女のライブを前回見たのは約20年前、私が支局で仕事していた福島か郡山の地方公演だった。彼女にとってはおそらく最後の地方ツアーだったのではないかと思うのだが、手抜き感があり、この人アイドルやる気ないんだろうなあ、と感じた。「なんてったってアイドル」でアイドルを相対化、さらに全身を真っ黒に塗りたくった写真や、「人拓」(人体の拓本)を発表するなど、サブカルっぽい活動をしていた時期だったので、私のオタクとしてのひがみもあって、そう見えたのかもしれないのだが。
同じような気分はアイドルオタクに共通していたのだろう。アイドルミニコミのはしり「よい子の歌謡曲」の発行人でもあった宝泉薫は「”なんてったってアイドル”というイカサマ」(『アイドルが脱いだ理由』2001年)で「なんてったって」やサブカルとの蜜月を「アイドルとしての魂を売った」と強い口調で非難している。
その後現在まで、小泉はアイドル時代の曲を歌うことには積極的ではなかったようだが、この日はデビュー曲「私の16才」や「素敵なラブリーボーイ」などをメドレーで歌った。一方、「私に新しい道を開いた人」として「あたしのロリポップ」を訳詞し、今年1月に亡くなった川勝正幸の思い出を語る場面もあった。
今回、アイドル時代の曲を歌った理由について、彼女はステージで「みなさんの青春に責任を取らなければと思った」と話していた。もはや、アイドル時代も否定すべきものではなくなっているのだろう。最後、ステージ奥のカーテンが開き、広がった六本木の夜景を背景に「Stardust Memory」を歌ったときは泣けた。サブカルへの屈託も何も、水に流せるような気がしたのだった。
3位)
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください