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【ポスト・デジタル革命の才人たち】 「食べログ」村上敦浩さんインタビュー(上):口コミの集積がビジネスになった理由

聞き手=服部桂(朝日新聞社ジャーナリスト学校シニア研究員)

 誰もが日常的に利用し、嗜好性の高いグルメの世界。数あるウェブサービスが入り乱れているが、全国の身近な飲食店を利用者の口コミを含めて横断的にチェックできるサイトとして「食べログ」の人気はこの数年、圧倒的なものとなっている。もともと、パソコンの価格を比較する「価格.com」で有名になったカカクコムが始めたサービスだが、利用者の視点から店を評価する方式が支持された。「食べログ」急成長の秘密とは。今後の展開はどうなるのか。

――最近、会社や友人との会合の案内には、メールにお店の情報のリンクが付けられている場合が多くなりました。実際には「食べログ」へのリンクが圧倒的に多いですね。

村上敦浩 ありがとうございます。食べログは2005年3月にサービスを開始し、おかげさまで現在では約72万店以上を網羅して400万件を超える口コミ情報を掲載し、月間のページビューは約6億5111万に達するまでに成長できました。月間の利用者数は約4100万人で、グルメサイトの中では最大といっていいと思います。

村上敦浩(むらかみ・あつひろ) 1975年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、アクセンチュアにて、CRM・SFA領域のコンサルティング活動に従事するかたわら、Neutrinoというユニット名で、米Mushレコードよりアルバムをリリース。その後、音楽活動を休止し、株式会社カカクコムへ入社。グルメサイト「食べログ」を2005年3月に立ち上げ、現在、月間利用者4000万人以上の人気サイトに育てる。現在、取締役食べログ本部長兼カスタマーサービス部長兼新規事業部長=撮影・佐藤類

――もともと、カカクコムではパソコンを中心とした価格比較サイト(価格.com)や旅行関連サイト(フォートラベル)を運営されていましたが。

村上 そうですね。食べログを始める頃のカカクコムは2005年に東証1部に上場を控え、かなり勢いに乗っていた頃でした。

 最初のパソコン関連でヒットしたサービスのノウハウを他分野に応用していこうという流れで、新規事業を考えようという機運が高まっていました。

 その候補の中には不動産や映画のサイトもありましたが、以前からグルメについては自分の好みや問題意識もあり、グルメガイドをぜひやりたいと思って応募したところ、幸いなことに新事業を任せてもらえたんです。

――グルメサイトは以前「ぐるなび」や「ヤフーグルメ」などが先行して有名でしたが、なぜあえてグルメのサイトを作ったのですか。

村上 私自身も食べ歩きが好きでいろんなサイトを利用しましたが、なかなか身近でいい店が見つからなかったんです。だいたいのサイトは店がお金を出す広告型のサービスで、大規模なチェーン店や有名な店は載っていても、実は身近にありながらも知られていない本当に美味しいお店が出ていません。それに、サイトを見て実際に行ってみると、店側の提供している情報とこちらの期待していたことが違っていたりしてがっかりすることもよくありました。

 また、グルメ本の世界も、『ミシュラン』や『ザガット』を始めとして数々出ていますが、ほとんどが東京や大阪など大都市中心の情報で地方の情報が乏しかったり、また書籍では掲載数にも限界があったりして、本当に行きたいと思える店が網羅されていません。身近なグルメ情報というと、無料誌の「ホットペッパー」やタウン誌、NTTの「タウンページ(イエローページ)」のような地域の電話帳しかない状況でした。

――後発ということもあり苦労したのではないですか。

村上 まずは何もないところから始めたので、グルメ本を買ってきて調べてはデータを手で打ち込んでデータベースを作るところから始めました。最初は、やっと6000店ぐらいからサービスを始めたのですが、店側の情報も会員(店舗会員)になってもらって無料で掲載し、全国に70万店以上ある飲食店をほぼ網羅したいと増やしていった結果、毎年倍増する勢いで伸び、他のグルメサイトと比べても圧倒的に掲載している店の数が多くなりました。使ってもらうと、ほぼどんな店も出てくると思いますよ。競合サイトはもちろん、タウンページよりも多いはずです。

――食べログでは口コミ情報が役に立ちますが、どうやって集めるんですか。

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