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久しぶりに大河ドラマらしい『八重の桜』

青木るえか エッセイスト

 大河ドラマとか朝ドラとか、始まったとたんに感想聞くのはやめてほしい。最初の1回や2回じゃわかりませんて。初回なんてだいたいブチかました、オレはこう見られたいんだ!っていう主張をブチかましてくるんですから。その主張についてツベコベ言わせてもらうのもアリだと思うけど、だいたいそういう「初回のブチかまし」って、ドラマが終わった頃にはほとんどどっかいっちゃってたりするから。

 ドラマ、それも連続ドラマの感想は放送が4分の3は終わったあたりで書くべきもんだろう。

 ……といいつつ『八重の桜』の1回目と2回目を見ただけで感想を書きますが、

 「これは久しぶりに大河ドラマらしい大河ドラマ」

 ですよ!

 大河ドラマの基準をどこに置くか、というのは年齢によって変わってくるだろうが、半世紀生きてきた私の基準は『天と地と』から始まって『おんな太閤記』で終わった、って感じだろうか。『勝海舟』『花神』『黄金の日々』なんてあたりが「気分的に最盛期」だ。

拡大鶴ケ城前にそろった綾瀬はるか(右から2人目)などの出演者=会津若松市

 その「私の最盛期」の大河ドラマの匂いが、『八重の桜』にはある。

 これには驚いた。去年、『平清盛』を見始めて、「この力の入れようは最盛期の大河に近いものがあるかも……」とコブシを握りしめ、しかし見始めて5分ぐらいでゲンナリし、「いや、やはり、大河の香りをただよわせる清盛を見るべきか……」と再び見て、またすぐゲンナリ……ということを繰り返したことを思い出した。

 去年の私はムリしてたということがよくわかった。『八重の桜』を見たら『清盛』なんぞ大河の足元にも寄れん。

 と、書きますと、どんだけ『八重の桜』が素晴らしいかとお思いでしょう。

 どう素晴らしいか、ということをご説明する前に、まずちょっと放送開始前のことを。

 放映前は、『八重の桜』って、なんだかいやーな感じだったのだ。

 まず、新島八重関係の書籍が大河をあてこんでバンバン出た。これは大河がはじまる時につきものの、年に一度の本屋行事なんですが、この新島八重関連書籍、どれも新島八重の顔写真がついており、その……他に写真はなかったのか。その当時、そうたくさんは写真なんか撮らなかっただろうし、八重さんとしてもこれが渾身の一枚だったんだろうが、それにしてももうちょっとどうにかならなかったのか……というおばさんの鹿鳴館スタイル。これは要らなかった。ないほうがよかった。

 そして、「ならぬものはならぬ」というあのスローガン。

 これは一体、どういう意味合いで使ってるのか。

 「ならぬものはならぬ」で思い出すのは、ドラマの『必殺シリーズ』に出ていたエロ尼が押し倒されて「なりませぬぅ~」と言うおきまりシーン……ではなくて、なんといっても土井たか子だろう。社会党委員長土井たか子の「ダメなものはダメ」。これで一世風靡したというのに、そんな社会党ももうないとはあらためて驚きますね。

 これは「保守勢力に対するリベラルからの確固たる意思表示」であったわけだが、では『八重の桜』における「ならぬものはならぬ」はどういう意味合いなのか。

 新島八重を主人公にした作品になったのって確か、東日本大震災を受けて東北を舞台にしたものになった……とか言われてなかったか。そこにもってきて土井たか子を思い出さないわけにいかない「ならぬものはならぬ」とくれば、これはNHKが打ち出した、明確な、

 「反原発メッセージ」

 ということになる。

 それならいいんだけど、なんか、こう、番宣などで繰り出される「ならぬことは、ならぬ」っていう台詞が、保守的なオヤジが好んで言うタイプの、「何かやろうとするのを阻止する文言」に聞こえるんだよなあ。

 もちろん、幕末で会津の娘が主人公っていうアラスジからいって、その両方の意味が出てくるに決まってるんだろうけど、ダブルミーニングで深みが出る、という良さはなく、ただ「どういうつもりで使ってんだ?」と居心地悪い気分になるだけなのだった。

 そんなわけで、見る前にはまるっきり期待してなかった『八重の桜』。

 はじまった瞬間に「うっ、これは」と姿勢を正す感じになった。

 私にそうさせた理由は明快だ。 ・・・ログインして読む
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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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