2013年03月25日
日本ではいまだ劇場未公開、未ソフト化の“幻の傑作”だが、国家が子どもたちを被験者にして極秘に進める原子力政策の恐怖、“テディボーイ”と呼ばれるエドワード朝時代(1841~1910)の服装を身に着けた愚連隊/不良グループの登場、そして横長のシネスコ画面の中に鮮烈に描き出されるロケ地やセットのモノクロ映像、などなど見どころ満載の必見作だ。
<物語(以下ネタバレあり):イギリス南部の港町ウェイマスを観光で訪れたアメリカ人サイモン(マクドナルド・ケリー)は、街で見かけた美人ジョーン(シャーリー・アン・フィールド)に惹かれる。が、サイモンがジョーンに近づこうとすると、彼女の兄、キング(オリヴァー・リード)の率いる黒革ジャケットを着たファシスト風の愚連隊が現われる。凶暴なキングらはサイモンを叩きのめし、彼の財布を奪う。
サイモンは運び込まれたカフェで、居合わせた国家官僚のバーナード(アレクサンダー・ノックス、好演!)と、女性彫刻家フレヤ(ヴィヴェカ・リンドフォース)に傷の手当を受ける。――傷の癒えたサイモンはふたたびジョーンに接近、彼女を自分のヨットに乗せ、キングらの追跡をかわす。そして二人は次第に懇(ねんご)ろになるが、二人が逃げ込んだ、海に面した断崖に穿(うが)たれた洞窟は、軍の秘密施設の一部だった(ウェイマス近郊)。
そこでは9人の子どもたちが隔離されて集団生活を送っていたが、彼、彼女らの体温は異様に低かった。子どもたちは核実験のさいに放出された放射能を浴びた結果、なんと人体組織が放射性物質になったまま――“子どもゾンビ”として!――生き続けていたのだ。そして官僚バーナードらは、核戦争を経ても生存可能な新たな人類として子どもたちを秘密裏に教育していたのであった……。その秘密を知ってしまったサイモンとジョーン、そしてキングとフレヤに、国家権力の魔の手が迫る……>
というふうに物語を要約すると、東西の冷戦時代に製作された『呪われた者たち』は、核の恐怖を娯楽のネタにしたハリウッド流のジャンル映画に思われるかもしれない。しかしこの映画には、
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