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ジョゼフ・ロージーの傑作SF映画、『呪われた者たち』がWOWOWで放送!――放射能人間と化した“子どもゾンビ”の物語

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 1951年、赤狩りを逃れてヨーロッパに渡ったアメリカの名匠、ジョゼフ・ロージー(1909~84、赤狩り:1940年代から50年代にかけてアメリカで吹き荒れた、共産党員およびその支持者を排除・追放した政治的ヒステリー)。その「亡命監督」ロージーがイギリスで撮ったSF映画、『呪われた者たち』(1961-63)がWOWOWで放送される(3月28日)

 日本ではいまだ劇場未公開、未ソフト化の“幻の傑作”だが、国家が子どもたちを被験者にして極秘に進める原子力政策の恐怖、“テディボーイ”と呼ばれるエドワード朝時代(1841~1910)の服装を身に着けた愚連隊/不良グループの登場、そして横長のシネスコ画面の中に鮮烈に描き出されるロケ地やセットのモノクロ映像、などなど見どころ満載の必見作だ。

<物語(以下ネタバレあり):イギリス南部の港町ウェイマスを観光で訪れたアメリカ人サイモン(マクドナルド・ケリー)は、街で見かけた美人ジョーン(シャーリー・アン・フィールド)に惹かれる。が、サイモンがジョーンに近づこうとすると、彼女の兄、キング(オリヴァー・リード)の率いる黒革ジャケットを着たファシスト風の愚連隊が現われる。凶暴なキングらはサイモンを叩きのめし、彼の財布を奪う。

 サイモンは運び込まれたカフェで、居合わせた国家官僚のバーナード(アレクサンダー・ノックス、好演!)と、女性彫刻家フレヤ(ヴィヴェカ・リンドフォース)に傷の手当を受ける。――傷の癒えたサイモンはふたたびジョーンに接近、彼女を自分のヨットに乗せ、キングらの追跡をかわす。そして二人は次第に懇(ねんご)ろになるが、二人が逃げ込んだ、海に面した断崖に穿(うが)たれた洞窟は、軍の秘密施設の一部だった(ウェイマス近郊)。

 そこでは9人の子どもたちが隔離されて集団生活を送っていたが、彼、彼女らの体温は異様に低かった。子どもたちは核実験のさいに放出された放射能を浴びた結果、なんと人体組織が放射性物質になったまま――“子どもゾンビ”として!――生き続けていたのだ。そして官僚バーナードらは、核戦争を経ても生存可能な新たな人類として子どもたちを秘密裏に教育していたのであった……。その秘密を知ってしまったサイモンとジョーン、そしてキングとフレヤに、国家権力の魔の手が迫る……>

 というふうに物語を要約すると、東西の冷戦時代に製作された『呪われた者たち』は、核の恐怖を娯楽のネタにしたハリウッド流のジャンル映画に思われるかもしれない。しかしこの映画には、

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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