2013年06月13日
エジプトを軸とする中東の動きを長年観察してきた田原牧の『中東民衆革命の真実——エジプト現地レポート』(集英社新書)は、革命前後のエジプトの様子をつぶさに報告してくれる。タハリール広場に集まった人々、集まらなかった人々。若者と「古典的」な革命勢力、そして軍隊……。描かれるのは、現地取材ならではの、革命のリアリズムだ。
「まずは片づけだ。いろいろ片づけなくてはならない。それからが大変だ」。停止した戦車の横で将校が呟く。そして田原は、「タハリール広場の先はまだ土ぼこりが霞んでいた」と本書を結ぶ。
『現代アラブ混迷史――ねじれの構造を読む』(平凡社新書)の水谷周は、「中東」を「引きで撮る」。すなわち長いスパンでアラブ地域の変遷を眺め、歴史の中で現在を捉えようとする。
水谷は、現在のアラブの混迷の原因を、次の三つの歴史的事実に帰す。
1.十字軍の後遺症
2.オスマン帝国の崩壊という予期しない事態
3.植民地主義による抑圧と、パレスチナ問題
これだけの要因を挙げられただけで、われわれ日本人の想像の幅を超えている。複雑さに輪をかけるのが、スンニー派、シーア派などのイスラム内の宗派間対立、そして植民地宗主国の恣意的な線引きによる国境によって時に離され時に混ぜ合わされた民族のモザイク。
水谷は、アラブの政治指導の体制は基本的に軍事独裁である、という。好き嫌いの感情や善悪の道徳観とは別問題に、現実にそうである、と。ムバラクに最後通牒を突きつけたのは、フェイスブックではなく、ほかでもないエジプト軍なのだ。そして、ムバラク後のエジプトの行方を、アラブ民衆革命全体の成否を判断する上での大きな試金石として、見定めていかなければならないと言い、ムスリム同胞団の暗躍がどの程度進むのかに注意を促す。
「イラン人はアメリカが大好きである」と、意表をついた一文ではじまる『イランとアメリカ――歴史から読む「愛と憎しみ」の構図』(朝日新書)の高橋和夫は、
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