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「長生きするセックス」企画はタイムリー?――ああ、男性週刊誌の凋落

鷲尾賢也 鷲尾賢也(評論家)

 車内で男性週刊誌を読んでいる姿をほとんど見なくなった。かつて月曜日には、「週刊現代」「週刊ポスト」を手にしているサラリーマンが多かった。朝は、「日経」、帰りに「現代」「ポスト」を読みふける。一方で、年配や女性の比率が高かったのが、木曜日発売の「週刊新潮」「週刊文春」だった。ヌードなどグラビアのかなりえげつない月曜派と、ソフトな木曜派と車内は二分されていたようだ。

 もうずいぶん前になるが、自分も、「週刊現代」編集部に在籍していた。当時は、学生運動の余煙がくすぶっており、そういう体験を経たタフな、激しい取材記者も少なくなかった。編集者も、どこか反権威・反権力をただよわせるタイプが多かった。

 自民党から共産党まで、天皇家から創価学会まで、大企業も例外はなく、俎上にのせられていた。ある意味においては平等に記事にされた。皮肉な視線を売り物にしていた「週刊新潮」も、文化の香りを特色にしていた「週刊文春」も、実際はそれほど変わりがなかったような気がする。

 当時は、「週刊現代」は公称80万部といっていた。「ポスト」も似たような部数だったろう。最近のABC調査では、トップの「週刊文春」が48万部、続いて「週刊現代が」43万部だという(新聞社系週刊誌の部数はあえていわない)。正直、それほど刷られているとは想像もしていなかった。実売率は70パーセントに到達しているのだろうか。車内のウォッチングでは、それほどの部数が読まれているとは思えないのだが……。車内の中吊り広告もめっきり少なくなった印象がある。

 「恐怖のアベノミクス相場 素人は退場すべし」。6月22日号の「週刊現代」のトップ記事だ。つい1カ月前は、どの銘柄が儲かるか、ダウはいくらまでいくのかと言っていたのに、この変わり身の早さ。さすが週刊誌である。

 気になるのは、「やればやるほど元気になる 長生きするほどセックス」という第2特集である。記憶するに、高齢者のセックス特集は、ずっと続いている。おそらく評判がいいのだろう。ということは、主たる読者が現役ではなくリタイアー組になっていることなのかもしれない。

 「週刊ポスト」6月21号の特集を見て唖然とした。

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筆者

鷲尾賢也

鷲尾賢也(わしお・けんや) 鷲尾賢也(評論家)

1944年、東京生まれ。評論家。慶応義塾大学経済学部卒業。講談社入社。講談社現代新書編集長、学芸局長、取締役などを歴任。現代新書編集のほか、「選書メチエ」創刊をはじめ「現代思想の冒険者たち」「日本の歴史」など多くの書籍シリーズ企画を立ち上げる。退社後、出版・編集関係の評論活動に従事。著書に、『編集とはどのような仕事なのか――企画発想から人間交際まで』(トランスビュー)など。なお、歌人・小高賢はもう一つの顔である。小高賢の著書として『老いの歌――新しく生きる時間へ』(岩波新書)など。2014年2月10日、死去。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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