篠田博之(月刊『創』編集長)
2013年06月15日
この原稿を書くために、『週刊現代』と『週刊ポスト』の該当記事を読み返したが、いやあ、すごい。とんでもない分量である。そもそも週刊誌で19ページぶち抜きの特集といったこと自体が異例なのに、『週刊現代』の場合、それが毎週のように延々と続いているのだ。
同誌が「死ぬまでセックス」という高齢者向けのセックス特集をシリーズ化したのは4月頃からだ。ライバル誌『週刊ポスト』もそれに対抗するかのように「死ぬほどSEX」という特集をシリーズ化。電車に乗ると車内吊広告で双方が「死ぬまでセックス」「死ぬほどSEX」と呼号しあうという異様な状況になっているのだ。
さらに最近は、これを受けて『SPA!』6月18日号と『週刊文春』6月20日号がこの話題を取り上げている。『SPA!』の見出しはこうだ。「二大週刊誌が巻き起こす『死ぬまでセックス』ブームを大検証」。いつのまにかブームということになっているらしい。
記事を読むと、「軒並み完売店続出」とも書かれている。本当かよ!と思って、『週刊現代』発行の講談社に問い合わせると、「話題にはなっていますが、それほど顕著に部数が伸びているということはありません」とのこと。何なんだ!?
似たような事例として、2012年秋、『週刊現代』『週刊ポスト』の2誌が「女性器」特集というのを延々と続けたことがあった。もともとセックスあるいは性というのは、男性週刊誌にとっては基本アイテムで、昔はソープランドなどの性風俗情報だったり、ヘアヌード写真だったりしたのだが、今は時代の変化にあわせて切り口に変化が加えられている。
2012年の女性器特集は、例えば『週刊現代』の場合、女性自身が自分の性について語るという切り口で、一部のフェミニストからも評価された。中高年おやじの好奇心をそそって部数を伸ばそうという魂胆は見え隠れするのだが、昔の性風俗情報が「性の商品化」「女性差別」と非難されたのとは隔世の感。編集部も知恵を絞っていろいろ考えているのだ。
今回の「高齢者の性」というテーマも、実はだいぶ前から何度か取り上げられてきたものだ。さらにこの何年か、例えば老人ホームについて取り上げると、編集部も予想していなかったほど読者の反応が良かったとか、総合週刊誌をめぐるある種の傾向が指摘されていた。
要するに、読者が高齢化しているのだ。あるいは高齢化社会の到来で、総合週刊誌を読み親しんだ世代が、そういう情報を歓迎するようになった、と言ってもよい。
でも、それらの記事を入念に読んでいると、思わず笑ってしまう。例えば『週刊現代』6月15日号「死ぬまでセックス実践編」。何と「本誌60代記者が身をもって体験してきたフーゾクレポート」なるものが掲載されている。
冒頭はこうだ。
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