2013年07月11日
去る6月14日、欧州連合(EU)は同理事会で、アメリカとの自由貿易協定(FTA)交渉開始について協議し、フランスが抵抗していた「映画やテレビ作品、DVDを含む音響映像サービス分野」は、交渉対象から当面の間、棚上げすることで合意に達した。
フランスからすると、とりあえずは”ホッと一息”といったところか。しかし振り返れば、かなりきわどい駆け引きが続いていたのも事実。フランスの文化関係者、とりわけ映画関係者の多くは、祈るような気持ちで成り行きを見守っていたことだろう。フランスが「聖域」と考えるところの「文化的例外」という概念は、すんでところで守られたのだと言ってよい。
「文化的例外」とは、「文化は単なる商品ではないのだから、経済分野においても国家の保護を認めるなど、例外的な扱いをするべき」と考える立場を指す。
1993年11月に、関税および貿易に関する一般協定(GATT)のウルグアイ・ラウンドで、フランスは、この「文化的例外」を楯に、正面からアメリカに「NO」を突きつけ、テレビ・映画といった映像部門を交渉から外すことに成功している。
2005年には、本部がパリにある国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の総会にて、カナダとともに「文化多様性条約」の採択を主導し、アメリカに鮮やかなカウンターパンチをお見舞いしたことも記憶に新しい。この条約で各国は、文化多様性を保護・促進するために独自の措置・政策を実施する主権的な権利が認められたのだった。
そもそもフランスは、90年代以降に「文化的例外」という言葉が国際交渉の場で飛び交うようになる遥か前から、自国の文化的アイデンティティを意識的に守ってきた国である。
第二次世界大戦後、フランスはアメリカの復興援助計画「マーシャル・プラン」を受け入れた。この時、アメリカから大規模な資本投下の恩恵を受けたが、どうもいつの時代も、うまい話には罠があるようだ。フランスは援助の見返りに、アメリカ映画に広く市場を開放させられた。そして瞬く間に、国中の映画館は、アメリカ映画だらけになってしまったのである。
例えば1948年には、映画のチケットに課されるTSAという映画付加価値税を導入している。これはチケット代の10.72%が自動的にCNCに徴収される仕組みとなっており、フランス映画の製作や普及、振興などに使われるようにしたものだ。
興味深いのは、観客がアメリカ映画を鑑賞するために支払ったチケット代
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください