メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

「あまちゃん」の水口さんに思う胸キュンワード――「おまえ」はもう死んでいる

矢部万紀子 コラムニスト

 暦の上ではジュライ、でもハートはサバイバーな矢部です、こんにちは。などと書き出してしまっても、多分かなりの方々にご理解いただけるであろう「あまちゃん」について書くのはけっこう度胸がいるのだが、ここはひとつ「さまよう気分はハンター」な勢いで書こうと思う。

 水口琢磨さんのことを書こうと思う。松田龍平演じるところの「GMT6」のマネージャー。彼を通じて実感した、「ドラマにおける『おまえ』の消滅」を書く。

「君は、いくつだ」拡大「君は、いくつだ」
   「おまえ」の消滅、などと突然言われてもさっぱりわからないと思うので、縷々書くのだが、きっかけは、7月10日放送のアキちゃんと水口さんの会話だった。すごく短いので再現する。

 アキ「眠れません」→水口「君は、いくつだ。布団の中でじっとしてなさい」

 親友ユイちゃんのママが東京で男の人と楽しげに歩いているのを見てしまったアキは、合宿所の2段ベッドで悶々として眠れない。そこでマネージャーの水口さんの部屋に訴えに行くシーンだ。

 とまとめると、おもしろくも何ともないのだが、私はこの水口さんの「君は」にやられてしまったのだ。ドキッとしたのだ。胸キュンになったのだ。

 そして思った。「これがキムタクだったら、絶対『おまえ、いくつだよ』だな」と。

 ここで私(52歳!)が、何を今さら胸キュンなどと書いておるかを説明するために、木村拓哉という人について書かねばならない。

 あらかじめ断わっておくが(と妙に力を入れてしまうが)、私は木村ファンでは全くない。が、彼をかねがね「おまえ力のある人だなあ」と思っていた(「おまえ力」は私の勝手な表現だが、「力」は「りょく」と読んでいただきたい)。

 彼は人との距離をいきなり縮める天才だと思う。初対面から誰にでもタメ口。その相手は老若男女を問わず、権威や財力のあるなしも関係ない。その癖、実は正義感にあふれ、ハートは熱い。そんな役をやらせるとピカイチで、実際の木村拓哉という人もそういう人ではないか、と思わせる。

 そして、彼の演じる男性が女性に向けて「おまえなー」などと言うと、観ている女性も一緒になってドキッとしてしまい、そこが彼の人気の根幹だと思う。

 木村拓哉という人は、実にさらりと「おまえ」を連発する。松たか子を相手に、「友だち以上、恋人未満」な感じを演じるときなど、「おまえ」連発だ。松たか子の恋に前のめりでない、又は不器用な感じの演技とうまくかみ合うと、すごくドキドキさせられる。

 と、ここまで書いて、念のためだが、これは私の「思い込み」の世界での木村拓哉と松たか子であり、「HERO」でも「ラブジェネレーション」でも、それほど「おまえ」は出てこないかもしれないが、多分言っていると思う。

 「くちなしの白い花、おまえのような花だった」と渡哲也がヒットさせたのは昭和48年。昭和はさておき、平成の時代に「おまえ」はなかなか言いにくい。だけど唯一、木村拓哉だけが言っている。

 とここで、やっと水口さんに戻るのだが、松田龍平という人は

・・・ログインして読む
(残り:約1152文字/本文:約2416文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

矢部万紀子の記事

もっと見る