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電凸を無許可でニコ生中継しても許されるのか――連続討議「ソーシャルメディア社会における情報流通と制度設計」から(3)

情報ネットワーク法学会

伊藤儀雄氏:ソーシャルメディアは「ニュース」を判断できるのか

 私は、ヤフージャパンでヤフーニュース、ヤフートピックスの編集をしています。ヤフージャパンのトップページにあるニュースの13文字見出しや関連リンクなどを、チームで編集しています。私の問題意識は、「ソーシャルメディアはニュースを的確に把握できるのか」です。ソーシャルメディアの登場以前は、ストレートニュース、事実を伝えるニュースは、基本的には新聞社などのメディアから発せられるものしかありませんでした。それが、twitterの普及で誰もが発信できるようになりました。ところが、その変化があまりに急に進んだせいで、ユーザーが慣れていません。ソーシャル発の情報をどう受容するかが、整理されていないのです。

伊藤儀雄氏拡大伊藤儀雄氏
 顕著な事例として、2つの例を挙げます。2つともちょっと角度が違った事例です。1つは、2013年2月に、東京・渋谷駅の近くで、ボヤが発生したときの出来事です。いわゆるホームレスの段ボールハウスが燃えて、ガスコンロなどに火が移って、大きな爆発音のような音が聞こえて、通りがかりのいろんな人がtwitterで写真をアップしたというものです。その中でも、2000~3000リツイートされた写真があって、アプリで画像を加工したことで、渋谷駅が炎上して大火事になっているような感じで伝えられました。

 この画像が、大量に拡散されてしまい、事情がよく分からない人たちは、渋谷駅でテロとか大規模な攻撃があったんじゃないか、と受け止めて、困惑しました。ただ、現実に起きた出来事としては単なるボヤなので、既存のメディアは取材に行かない。情報が出てこないということで、これでなぜニュースにならないのか、情報統制されているんじゃないか、という反応が結構twitterではありました。

 一方で、こないだ松井秀喜氏と長嶋茂雄氏に国民栄誉賞というニュースが出ました。これは、群馬県の県紙である上毛新聞が全国紙を出し抜いて、歴史的なスクープとして4月1日付の朝刊に出したものです。先行したのは1紙だけで、その日の夕刊帯から、全国紙が後追いしました。本当に歴史的なスクープで、後になって、みなさん、「上毛新聞がすごい」ということになりましたが、twitterなどソーシャルメディアのリアルタイム検索では、スクープが出た朝4時から、夕刊が出るまでの段階で、ツイートが何件あったかというと、確認出来た限りで3件しかなかったんです。上毛新聞がウェブに情報を出していないとしても、紙で31万部出ているので、見ている人はたくさんいるはずです。でも、それをツイッターでたったの3件しかつぶやかない。ということで、ネット上ではスクープの意味がほとんどなかったんです。

 そうなると、ソーシャルメディアがあるのに、それを使っている人がニュースをおそらく的確に判断できた状態ではなかったというのがあります。実際に、こうした問題を改善するにはどうしたらいいのかと言うと、ツイートのなかから、デマや不正確な情報を判別するロジックを作るとか、デマを流す人を減点するとか、正確な情報を流した人を加点するなどの仕組みを適用して、判定できたらいいメディアやいい社会ができるのではないかと思います。

五十嵐悠紀氏:ソーシャルメディアやライフログによる世の中の変化

 ほとんど初めましての方が多いのですが、私は筑波大学で研究員をしています。この4月から明治大学の中野キャンパスに新しい学部ができまして、非常勤で週に1回、明治大学にも行っています。お茶の水女子大学でも非常勤で情報倫理という科目を担当していまして、女子学生に情報の発信など情報の取り扱い方について教えています。

五十嵐悠紀氏(左)拡大五十嵐悠紀氏(左)
 今日は、的を射てないかもしれませんが、世の中、色んな技術が発展していくと、世の中はどのように変化するかについて考えてみます。私たちの分野では例えば、今、「ニコニコ超会議2」という大きなイベントがちょうど裏でやっていまして、今日と明日(4月27~28日)は生放送で中継されています。

 でも、現地にいかなくても会議に参加して、twitterで情報を発信することもできます。質疑応答もツイッターでできます。アカデミズムの学会でも、そういう流れが最近は増えています。

 明治の先端メディアサイエンス学科では、講義中にツイッターで情報を発信することを認めていて、対外的にアピールしています。ただ、ほかの大学や明治のほかの学部では、授業中のツイッターは禁止という運用も多いでしょう。twitterの使用全部がだめというのではなくて、匿名アカウントにしなさいという大学もあったりします。

 でも、匿名でもバレるときはバレる。IPアドレスなどを使えば、匿名でつぶやいたからといって、絶対にばれない保証は一切ないです。実名であれ匿名であれ、追跡すれば何らかの方法でたどりつくことができるので、意識した上で発信しないといけないのですが、その危機感が今の若い人たちには足りない気がします。

 若い世代ほど、物心ついたときから既にソーシャルメディアがある状態で育って生活しているので、ソーシャルメディアの利用が当たり前になってしまっています。「私はどこにいる」とか「今なんとか駅の前にいるよ」とか、「どこどこへ旅行に行ってくる」とか、一人暮らしの人がつぶやくと、家が空いているのを発信しているようなもので、位置情報、文字情報、写真情報を発信することへの危機感が足りないようです。こうした大多数のユーザーを、どうやって技術や社会で支えたらいいのかと感じます。

 基調発表された木村さんと似たような分野で研究していますが、私の周りにもライフログの研究をしている人がいます。ライフログでは、写真を何十万枚も撮りためてすべて記録をしておいて、必要な時に引っ張り出すんですね。この人には前に会ったことあるかどうか、といった場面で過去の画像を引っぱり出せます。Google Glassをかけて町中を歩いて、「五十嵐さん、こんにちは」と言われたとき、「この人は誰々」といった説明が出てきて、とっさに判断できるような技術もどんどん研究されています。ジャーナリズムなどの方面にはあまり詳しくないのですが、主にテクノロジーの面から、みなさんと議論していきたいです。

山口浩氏:ソーシャルメディア時代の新しいリスク・コスト分担

 駒沢大学の山口です。私が何をやっているのかというと、金融、契約、情報技術の融合です。何でも入るようにゆるいテーマにしています。これらのテーマをくっつけると面白いことが起きます。経営学の研究者なので、新たな技術が社会に適応していく仕組みを考えています。制度というと、主に公的なものを指すことになりますが、もう少しゆるく考えて、ある仕組みを公権力でやるのか民間、企業の契約でやるのか。技術の進展とともに、これまで私たちの社会がやってきたことを見直す必要があると思います。

山口浩氏拡大山口浩氏
 こうした問題に関しては、何かをやろうとすると、メリットとデメリットがあります。メリットとデメリットはだいたい同じもので、誰かにとってメリットならば誰かにとってデメリットになります。プライバシーを重視することは、誰かの知る権利を制限することになります。

 今回、木村さんの発表やみなさんが問題提起されている問題は、それぞれ面白いテーマですが、横串に通すものがあるといいと思います。それは、リスクとコストです。何かをやろうとするときに、それに伴うリスクを誰がどう負担するか、ということです。

 技術が変わると、リスクとコストも変化するでしょう。その時に、制度の議論から入ると、「人権は……」といった、べき論から入るとらちが明かない。それよりも、リスクはどうなるのか、どう変えたら納得してもらえるのか、ということを考えたいと思います。これは、広い意味でのリスクマネジメントです。

 そして、集合知の話をよくしています。なかなか使えないものがどう使えるようになってくるか。これまではマスメディア的には、発信者にすごく大きな責任を負わせていて、その代わりにコストを払うという感じでした。これまでの発信者は、プロとアマで、お金と責任を基に分けることができましたが、技術の発展でその関係が変わってきます。真ん中の人が出てくるのです。

 その時にあちこちで出てくる言葉で、私の言葉ではないのですが、「馬鹿基準」というのがあります。世の中馬鹿に合わせるということです。そうすると不満に思う人が出てきます。私はこんなに守ってもらわなくてもいいという人が出てきます。つまり、馬鹿を守ることと、馬鹿じゃない人の自由をどう保つのかという問題です。1つの制度で全部を扱うのはやめた方がよいと思っています。私は大丈夫という人と、私を守ってくれという人がいます。それを分ける仕組みを考えるのです。

 そのときに、守るために必要であれば、機械を使うこともあるでしょうし、権利を制限することもあるでしょう。その時に、大人と子供で分けるというのもあるでしょう。だけど、大人でも馬鹿はいて、子どもでも利口な人はいます。別の分け方をしなければいけないかもしれません。口コミマーケティングの問題では、WOMJ(WOMマーケティング協議会)にいて、仕組みのことを考えています。ブロガーの情報発信の責任は何だろうということも、考えています。

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