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もー桑田佳祐さんってば、非マッチョの星で、永遠に不滅です

矢部万紀子 コラムニスト

 サザンオールスターズが初めてTBS系の「ザ・ベストテン」に出たのは、1978年の8月31日だったとグーグルが教えてくれた。そうかあの日は、高校3年の私にとって明日から2学期という日だったのか。テレビ見てる場合じゃないな。けど、見ていた。

 サザンは「スポットライト」への登場で、着ていたのはジョギングパンツ、正確にはUCLAのジムショーツだということは今回知ったのだが、私は上半身裸の桑田佳祐さんをあの日、「下着だ!」と思った。地味な県立高校の、テレビばっかり見ているダメ受験生には、UCLAは余りにも遠かった。歌はもちろん、「勝手にシンドバッド」。いきなりの「らららーららら、らららー」、「今、何時」の連呼。すごーくかっこよかった。

1994年、ソロとして初のツアーをしたときの桑田圭祐さん拡大1994年、ソロとして初のツアーをしたときの桑田圭祐さん
 この「下着サザン」の衝撃は、「パジャマでザ・ベストテン」に遭い、私の中で頂点に達した。もう「スポットライト」でなく「ベストテン」の常連になっていて、桑田さんは黒柳徹子さんを「お母さーん」などと呼ぶ人懐っこさを見せていた。

 そんな中、原坊を含む全員が「パジャマ」で出てきて、歌った。

 驚いた。まぶしかった。うらやましかった。「実力のある人は、常識にとらわれないんだ」と思った。「受験生の常識」をクリアしなくてはいけないことはわかっているのに全然その気になれない、どんよりな自分を持て余していたから、けっこう堪えた。

 それから35年。自分を棚にあげるなら、ニッポンのどんよりっぷりがひどいことになっている。

 国の借金はとんでもなく増え続け、「非正規雇用」が当たり前で、ネトウヨの人たちが新大久保で「死ね」と叫び、いつになったらみんなが福島に戻れるのかまるでわからない。選挙があったけど、憲法の「風前の灯度」が上がっただけなような……。

 あーあ、何だかなー、仕事も楽じゃないし、やんなっちゃうなー。

 近頃の大人が思う、すっごく一般的なことを、私めも思っていた2013年の夏。サザンが帰ってきた。「ピースとハイライト」で。

 「何気なく観たニュースでお隣の人が怒ってた」で始まり、「歴史を照らし合わせて助け合えたらいいじゃない」と桑田さんが歌ってた。ずーっと日本を覆っている中国、韓国とのよろしくない関係をはっきり形にし、解決を提案していた。驚いた。

 5年ぶりのサザン復活で「政治」がテーマの歌だなんて、誰が想像しただろう。でも桑田さんの歌なら、政治がちゃんとポップになる。タイアップもつく。売れる。「実力のある人は、常識にとらわれない」。35年前と同じだった。

 復活サザンの特番を、WOWOWの無料放送とNHKで見た。桑田さんが震災や自身の病気や日中韓のことなどを語っていた。歌っていた。見ているうちに、サザンのファンの大人だけでなく、若い子やネトウヨな人や、安倍晋三という人も、桑田さんが言うんだから、いや歌うんだから、この問題を考えて、なんか事態が違う方に進んでくれたりするんじゃないだろうかなどと、夢のようなことを少し本気で期待した。

 オリンピックでもサッカーのワールドカップ予選でもマー君の16連勝でも、なんでも「元気をもらいました」「勇気をいただきました」とコメントするご時勢に、ケッと思っていた。だけど、「ピースとハイライト」な桑田さんを前にした自分の気持ちを考えたとき、「元気をもらった」がふさわしいかなと思ってしまったことを、ここでカミングアウトしてしまおう。

 復活シングルのもう一曲が「栄光の男」だった。長嶋茂雄の引退を喫茶店で見て泣いてしまったと桑田さんは特番で語っていた。その話から、「栄光の男(または女)」ってどんな人だろ、と考えた。 ・・・ログインして読む
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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。

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