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イヤでもつい見る「あまちゃん」、イヤだから見るのをやめる「半沢直樹」

青木るえか エッセイスト

 こりゃまたいつものよくあるドラマだ(だから好きじゃないので見ないでいいや)と15分ぐらい見たところで結論が出てしまったのでその後は見てなかった。週刊誌なんかで「『あまちゃん』を超えた!」とか言ってるが、そもそも『あまちゃん』がそれほど持てはやされるドラマとは思えないので、それを超えたところで……と無視していた『半沢直樹』なのですが、テレビを見る者として無視できないドラマだと力説されてイヤイヤ見てみた。

 そもそも「テレビを見る者」って何だ。家にテレビがある人か。日本人全員か。

 で、あらためて見てみても、「いいのかこれで」と思うばかりでした。テレビドラマでダメと思うものにはいくつかタイプがあって、

・イヤだなあと思って見るのをやめる
・イヤだなあと思ってついムキになって見る

 『半沢』は前者で、後者が『あまちゃん』だな。見なくて別にいいのだが、『半沢直樹』。

 でも何がイヤなのか多少言いますと、

 いいのか堺雅人。
 いいのかミッチー。
 いいのか上戸彩。
 いいのかこんな演技で。

 と、イヤさが湧き出てきまして、好きでご覧になってる方には申し訳ないのですがもう少し続けてイヤさを述べたい。

「半沢直樹」=提供・TBS提供拡大「半沢直樹」=提供・TBS提供
 なぜこの番組の視聴率が他に比べていいのかじっくり考えてみたんですけどわからない。

 最近のドラマでいうと『斉藤さん2』というのを見かかってこれも一回見てやめてしまった。なぜ『斉藤さん2』を見ようと思ったかというと、これが始まるのにあわせて、午後4時から毎日再放送やってたんですようちの地元で。

 前番組を見てそのままチャンネル変えずに流れているのを、何かしながら(主にマンガ読むとかネットするとかしながら)流して見ていて、「よくもまあこんな古色蒼然としたドラマを今ごろ」と思っていた。そしたら新番組で続編開始、というんで、何かこの古色蒼然ぶりは払拭されたのだろうかと気になって見たわけでした。

 ぜんぜん払拭されてませんでした。むしろ昂進したんではと思わせた。

 この「古色蒼然」というのがどういうものかといえば、忠臣蔵であり水戸黄門。主人公が悪いやつによって不幸な目、悲惨な目に遭うが、最後は相手を倒す。かゆいところをかいたら気持ちがいい、みたいなドラマのことですよ。

 まあ、それはドラマの基本てものかもしれませんが。でもそんなこと今どきやりたくない、ってものではないでしょうか。そして私は今どきそんなものは見ないでいい。

 『斉藤さん』は、かゆいとこをかく気持ちよさを味わうために、酒のんで二酸化炭素まじりの息をはーはー吐きながらランニング一丁でヤブの中に入って蚊にさされにいくような、そういうストーリーである。

 それにくらべりゃ『半沢直樹』はまだマシなのかもしれないが、それでもせいぜい「ヤブに入るのではなく、畳にダニを仕掛けておく」という程度の「マシさ」ではないか。

 しかし、どうも、『半沢直樹』はそういう水戸黄門的かゆいとこをかく的な楽しみ方をされているのではないような気がする。私の周囲でも見てる人がたくさんいて、気持ちがわかるわ~~、とか感情移入する、とか言っている。

 え……?

 私の知り合いの女子銀行員が、「上司(都市銀行のナントカ本部の部長だそうだからきっとエライ)に「半沢直樹見たか!」と言われて、あわてて録画して見始めた」とのこと。で、「面白いデ!」と言う。銀行の同僚はみんな見てるそうだ。彼女が言うには、銀行内のことはけっこうリアルで、そのへんが面白いんだそうです。上司の男連中は「身につまされる」と言ってるそうです。言いながらも「不正融資でこげつき5億は安すぎるわナ」とも言ってるそうです。

 そうなんですか。

 そして今日、ワイドショー見てたら夕刊記事紹介コーナーで、『半沢直樹』でクローズアップされる銀行員妻の実態! 銀行員の妻たちが「まさにあの通り! 銀行員妻なんてもうイヤ!」と嘆く、みたいな記事を紹介しているではないか。

 うーむ。私も社宅婦人会に出させられたイヤな思い出などもありますが、結局のところ、出たくなかったら毅然と出なきゃいいわけで、唯々諾々と出席した自分が悪かった。それがわかったからその後一切出てなくて、それでも別に問題もない。へんな奥さんだと思われて誘われなくなってたいへん楽だ。妻が社宅婦人会に出ないから夫の出世に響くなんてことはない。

 なので銀行員妻が社宅づきあいとかで銀行員妻であることをイヤがる、というのはピンとこない。たぶん夕刊紙のツクリ記事である(と断定)。

 しかし銀行内の有様については何も知らないので、もしかしてすごくリアルな実態を描いているのかもしれない。じつは山崎豊子もまっさおな「企業ドラマ」なのか? 私には興味のない世界であるが。

 でも、企業の歯車に押しつぶされそうになるのをこらえる男、の話であるとして、私が「これはいかんだろう」と思うのは、 ・・・ログインして読む
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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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