メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

『ごちそうさん』は朝ドラの鏡みたいなドラマだけど、食べ物が……

青木るえか エッセイスト

 『ごちそうさん』はいつもの朝ドラだと思う。

 そういう意味でいえば『あまちゃん』だっていつもの朝ドラだった。「いつもの朝ドラ」って何だというと、「最後はほんのりいい場所に着地するお話」。

 ドラマじゃないけど、毎日新聞で連載してる西原理恵子の『毎日かあさん』てマンガがある。先日、やなせたかしの死を受けて書かれた回の、「最初はハチャメチャな無礼者みたいなところから持っていって、ちょっとシーンとさせてから最後はホロリとさせる」手管! このオヤジ殺しかつお母さん殺しかつ、無軌道な若者もついでに殺すというこのワザ! これがあるからサイバラは安心して売れる人なんだよ、と思わされる。

朝ドラの「ヒロイン・バトンタッチ」セレモニーでまめぶ汁とぬか床を交換する能年玲奈さん(右)と杏さん=2013年9月10日、大阪市中央区拡大朝ドラの「ヒロイン・バトンタッチ」セレモニーでまめぶ汁とぬか床を交換する能年玲奈さん(右)と杏さん=2013年9月10日、大阪市中央区
 「あまちゃん」も、今までの朝ドラと違う的なことを言われてホメられたりクサされたりしていたが、「安心してホロリとできる」という点では「朝ドラにぴったり」だった。

 でもホロリとさせるまでにハチャメチャがあったり朝ドラらしくないネタが出てきて、しかし演出が丁寧(『カーネーション』の「ていねいな、くらし」みたいな丁寧さとは違う、ふつうにまっとうな丁寧さ)なので、ホロリもきわだつし感動も大きいという、実に正攻法な連続テレビドラマで、『あまちゃん』は朝ドラ界の『毎日かあさん』です。

 それでいうと、ぜんぜん朝ドラっぽくないアナーキーな作品だったのは『純と愛』だったなあ。ワケのわからない人物、共感できない人物が、意味のわからない行為によってぽかーんとなってしまうような結果を出す。パンク世代なので体制打破! アナーキズム万歳! とか思ってたけど、ツメの甘いアナーキーさは迷惑なだけだ、ということがよくわかった『純と愛』でした。

 なので『ごちそうさん』は安心の朝ドラだと思うのです。これは前が『あまちゃん』だったからいろいろ言われるが、前が『おひさま』とか『てっぱん』とか『ゲゲゲの女房』だったら、別に何か言われることもなく流されてたと思う。その点でお気の毒である。

 安心の朝ドラ、ということは、「熱心に見られるわけではない」ということも意味する。私も『ごちそうさん』ぜんぜん熱心に見てない。たまに話のスジが見えなくなりかかったりする。でも見えなくても別に大丈夫というか(『あまちゃん』も間が抜けても別になんの問題もなく見られた)、話がわからなくてもつまらないことがないというか、きっととんでもないことにはならない、という信頼がある。

 とんでもないことになってこそのドラマ、とか思うけど、それも『純と愛』を見ていれば「とんでもないことを起こすだけでは見る者がゲンナリする」ことがわかったのだった。いろいろと『純と愛』には勉強させてもらった。

 そういうわけで、見たり見なかったり、という役目にとても相応しい、朝ドラの鏡みたいなドラマだと思う、『ごちそうさん』。

 でも見ていてひっかかる場面がいくつかある。

 食べ物が ・・・ログインして読む
(残り:約978文字/本文:約2180文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

青木るえかの記事

もっと見る