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【2013年 ポピュラー音楽 ベスト5】 「小細工」してないアーティストたち

近藤康太郎 朝日新聞諫早支局長

(1)アルバム「BiS階段」(BiS階段、エイベックス)
(2)ポール・マッカートニー公演(11月21日、東京ドーム)
(3)アーマ・トーマス公演(5月30日、ビルボード・ライブ東京)
(4)FTISLAND公演(8月10日、サマーソニック幕張メッセ)
(5)『山口冨士夫 天国のひまつぶし』(河出書房新社)

 「終わる、終わる」と言われながら、2013年も、アイドルブームにかげりは見えなかった。AKB48に新陳代謝が進み、ももいろクローバーZの人気が盤石。そんななかでも、ノイズとアイドルの融合という、とんでもない実験を成し遂げた(1)のBiS階段が衝撃だった。海外でも、ぶっ飛んで受け止められた。

 アイドルグループのBiSは、血まみれセーラー服や、釘バット、スクール水着でライブしたりという、アイドル界でも異端で知られたグループ。これと合体したのがJOJO広重を中心としたノイズユニットの非常階段。泣く子も黙るキング・オブ・ノイズ。

 両者が合体し、なんとエイベックスからアルバムを出した。文句なくおもしろかった。BiSのアイドル歌謡に、JOJOらのノイズが執拗にからむ。これが、シューゲイザーといわれるロックバンドの一群の、美しいギターノイズのようにも聴こえるし、あるいは、ホラー映画のBGMのようにも聴こえてくる。痛快な笑いがあった。ユーモラスなんだ。

 日本の、権威ある音楽誌に取り上げられたが、評価はさほど高くなかった。いわく、もともと異端であるBiSがノイズと組むのは、むしろ想定内、意外性がないのだとか。この評価は、歴史を無視していると思う。フェアでない。

 たしかに、いまヒット曲のギターソロの一部にノイズが紛れ込むのは、珍しいことではない。でもそれは、非常階段のメンバーらが、誰に頼まれたわけでもないのに、しつこく、中断することなく、世にノイズというものの存在を提示してきたからなんだ。ノイズミュージックではない。純正なノイズ(騒音)が、音楽の、いち構成要素となりうる。そのことを、人生をかけて証明しようとしてきたのが、非常階段だった。

 非常階段のJOJO広重は、早くも1994年にスラップ・ハッピー・ハンフリーというバンドを結成し、森田童子の曲を、ノイズギターのバックで歌うという実験を試みた。「歌」と「ノイズ」の合体ロボは、その後の20年にもわたる実験の末に形成されたものだ。それが、オーバーグラウンドでも認められるようになったのが、2010年代なのだ。世間の無理解をしれーっと受け流し、自ら信じる道を進む。頭が下がるとしか、言いようがない。

(2)のポール・マッカートニー来日公演では、ロックンロールバンドとしての一体感が、なにより心地よく、突き抜けていた。当日演奏した「ヘイ・ジュード」や「レット・イット・ビー」など、ポールお得意の美メロのバラードもいいんだが、ポールのもう一方の顔である、「永遠のロックンロール少年」という側面を、改めて認識した。

東京ドームでのポール・マッカートニー=2013年11月18日 (c)シャノン・ヒギンス拡大東京ドームでのポール・マッカートニー=2013年11月18日 (c)シャノン・ヒギンス
 当日もやってくれた「バック・イン・ザ・USSR」や「ゲット・バック」の、若々しくも跳ねたビート。1970年代末、ロンドンパンクの台頭期に、ポールのロックは保守的で、守旧派で、古くさいカネ持ちロックの象徴みたいにとらえられたこともある。冗談じゃない ・・・ログインして読む
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筆者

近藤康太郎

近藤康太郎(こんどう・こうたろう) 朝日新聞諫早支局長

1963年、東京・渋谷生まれ。「アエラ」編集部、外報部、ニューヨーク支局、文化くらし報道部などを経て現在、長崎・諫早支局長。著書に『おいしい資本主義』(河出書房新社)、『成長のない社会で、わたしたちはいかに生きていくべきなのか』(水野和夫氏との共著、徳間書店)、『「あらすじ」だけで人生の意味が全部分かる世界の古典13』(講談社+α新書)、『リアルロック――日本語ROCK小事典』(三一書房)、『朝日新聞記者が書いた「アメリカ人が知らないアメリカ」』(講談社+α文庫)、『朝日新聞記者が書いたアメリカ人「アホ・マヌケ」論』(講談社+α新書)、『朝日新聞記者が書けなかったアメリカの大汚点』(講談社+α新書」、『アメリカが知らないアメリカ――世界帝国を動かす深奥部の力』(講談社)、編著に『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』(文春文庫)がある。共著に『追跡リクルート疑惑――スクープ取材に燃えた121日』(朝日新聞社)、「日本ロック&フォークアルバム大全1968―1979」(音楽之友社)など。趣味、銭湯。短気。

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