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『最後の晩餐』――中国・韓国に見る合作映画の新しい形

西森路代 フリーライター

 世の中に合作映画はたくさんあるが、たいていの場合は、スタッフも各国から参加するなら、俳優陣も各国から参加することが通常で、国際色豊かで、一目見ただけで「合作映画だな」とわかる作りのものも多かった。

 しかし、3月1日から公開となった中国と韓国の合作映画『最後の晩餐』は、韓国の企画で韓国の監督がメガホンをとりながらも、演じているのはすべて中国語圏の俳優で、中国国内で2013年に公開されると初日2日間で興行収入が5億円を超え、中韓合作映画史上最高のヒットとなった。

 このような今までにない企画はどのようにして生まれたのだろうか。映画を手がけたオ・ギファン監督に話を聞いた。

 もともとは、日本でも公開された2001年の映画『ラスト・プレゼント』(その後、堂本剛主演で2005年にテレビ朝日でドラマ版が制作された)の中国版リメイクとして話が上がっていたというこの映画。しかし、出来上がった作品は、韓国のメロドラマ的な要素と、現在のポップでオシャレな中国の要素が組み合わさり、陶芸家を目指す彼女と三ツ星シェフを目指す彼とのラブストーリーに変わっていた。

「もう一度『ラスト・プレゼント』を作ってみないかとCJ Entertainmentに言われたときは、ぜひやりたいと考えていました。でも、いざ準備にとりかかると、国によって情緒というものが違うことに気が付いたんです。また、『ラスト・プレゼント』はお笑い芸人が主人公です。日本でリメイクされる場合は、日本にもお笑い芸人がいて、比較的状況が似ていたのでそのままでよかったのですが、中国のお笑い芸人となると状況はちょっと違うということでした。だから、骨組だけは残して新たなキャラクターとストーリーを作ることになったのです」

 中国に合わせたのはストーリーだけではない。合作映画なのに出演者も韓国の俳優を起用することなく、中国で人気のバイ・バイホーや台湾を中心に活躍するエディ・ポンを主演に迎えた。

「今回の映画は中国で公開する映画だということを第一に考えて作りました。とにかく中国の人に愛される映画を作ろうと思ったんです。だから、中国の作家さんや友人に、『こういうとき、中国の人だったらどう思う?』と、とにかく相談しました。特にこの映画のエンディングシーンは、最初に考えていたセリフとぜんぜん違うものになりました。みんなに『中国人の女性は、こんなこと言わないよ!』ってアドバイスされたからです。でも、もし日本で映画を作るとしたら、やっぱり同じように意見を聞くと思いますね」

 韓国でもドラマ『半沢直樹』は有名だというオ・ギファン監督。そのヒットにも、その国ならではの共有体験や情緒が関係しているという。

 「韓国でも『半沢直樹』の話題はよく耳にします。気になると、私はすぐに検索してみるんですが、その記事を見たとき、やっぱりこれはヒットする作品なんだろうなと思いました。韓国でも国内でヒットした『殺人の追憶』という映画がありましたが、ストーリーもさることながら、1980年代の韓国のことを描いていて、そのことが韓国の人には懐かしく共感できるからということもあったんです。『半沢直樹』の中にも、そういった日本人ならではの共通の感情があったのではないでしょうか」

 オ・ギファン監督は、その国特有の共通体験や感情に訴える作品もあれば、国を超えて共通できるテーマもあるのではないかとも分析する。

「韓国では日本の『ハケンの品格』
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筆者

西森路代

西森路代(にしもり・みちよ) フリーライター

フリーライター。1972年生まれ。愛媛と東京でのOL生活を経て、アジア系のムックの編集やラジオ「アジアン!プラス」(文化放送)のデイレクター業などに携わる。現在は、日本をはじめ香港、台湾、韓国のエンターテイメント全般について執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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