2014年04月18日
『アナと雪の女王』の快進撃が止まらない。
日本公開からわずか31日間で累計動員は756万人、興行収入が92億円に到達(4月15日付「シネマトゥディ 映画週末興行成績」)。公開規模は違えど、宮崎駿監督作品『風立ちぬ』は公開30日間で累計動員584万人、興収72億円であったこと(2013年8月20日付「シネマトゥディ 映画週末興行成績」)を考えると、その勢いのもの凄さが分かろうというものだ。
観客層は老若男女全世代に亘っており、4月26日からは本編主題歌を映画館でみんなで歌えるようにと、急遽特別字幕版の上映が決定した。
日本での大ヒットの結果、全世界歴代興行収入の累計が11億1258万ドル(約1112億円)に到達。『トイ・ストーリー3』(2010年)の10億6320万ドルを超え、アニメーション映画で歴代1位、実写を含めても第8位に浮上。ちなみに『アナと雪の女王』の製作費は1億5000万ドル(約150億円)とされており、既に7倍以上の興行収入ということになる。ゴールデン・ウィークを迎え、まだまだ数字は伸びそうだ。
今回は、快作誕生に至った歴史的背景を概観してみたい。
世界初のカラー長編アニメーション『白雪姫』(1937年)以降、ディズニーは幾多の歴史的名作長編を作り出して来た。『シンデレラ』(1950年)『眠れる森の美女』(1959年)といったプリンセス物語、『ダンボ』(1941年)『バンビ』(1952年)などの動物世界もの、『わんわん物語』(1955年)『101わんちゃん』(1961年)『ジャングル・ブック』(1967年)など人間と動物を描いたもの、『ピーター・パン』(1953年)『王様の剣』(1963年)などの少年冒険もの、クラッシック音楽とアニメーションの融合を試みた『ファンタジア』(1940年)等々。
いずれもクライマックスは絢爛豪華なミュージカルシーンであった。中でも「プリンセス」「動物」「動物と人間」のテーマは三本柱であり、各作品のキャラクターも長く愛され続けている。
1966年12月15日、スタジオの創設者ウォルト・ディズニーは道半ばにして死去した。その後、スタジオの屋台骨を支えたのは伝説の9人のアニメーターたち「ナイン・オールドメン」(エリック・ラーソン、レス・クラーク、ミルト・カール、ウォルフガング・ライザーマン、ジョン・ラウンズベリー、フランク・トーマス、オリー・ジョンストン、マーク・デイヴィス、ウォード・キンボール)だったが、70年代末にはみな現役を退くこととなった。
ここに、40年に亘って続いて来たディズニー長編の第一次黄金期は終焉を迎えた。明けて1980年代、新旧スタッフの世代交代が進む中で制作された『きつねと猟犬』(1981年)以降は人気作を輩出出来ず、ディズニー長編は第一次低迷期を迎えた。
それを覆したのは新世代を中心に制作された『リトル・マーメイド』(1989年)の登場である。監督のジョン・マスカーとロン・クレメンツ、作画のグレン・キーン、マーク・ヘン、アンドレアス・デーハら70年代入社組は、今やスタジオの中核を担う存在へと成長していた。
以降、新たな制作陣によって毎年大ヒット作品が生み出され、ディズニー長編は華麗な復活を遂げる。いわゆる「ニュー・クラシックス」と呼ばれる第二の黄金期の到来である。
『美女と野獣』(1991年)『アラジン』(1992年)『ライオン・キング』(1994年)の3作でアニメーション映画の興行記録を塗り替え、『ポカホンタス』(1995年)『ノートルダムの鐘』(1996年)『ヘラクレス』(1997年)『ムーラン』(1998年)『ターザン』(1999年)と大ヒット作が続いた。
しかし、2000年代に突入すると3D-CG全盛時代が到来、状況は一変した。
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