メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

キリストを超えた(?)道重さゆみの犠牲的精神

鈴木京一 朝日新聞文化くらし編集部ラジオ・テレビ担当部長

 道重さゆみは、もしかしたら身を挺して紅白歌合戦出場を賭けたのではないか。彼女の「モーニング娘。」卒業の一報を聞いて思った。

 モーニング娘はメンバーがいつかは卒業するグループだ。監督の進退を親会社グループ内の「人事異動」と言ったプロ野球チームのオーナーがいたが、モー娘メンバーの多くも、卒業しても引退せずそのまま事務所に残って芸能活動を続ける。モー娘の単独公演ではなく、ハロー!プロジェクトに属する諸ユニットの合同公演でモー娘から「卒業」する(といいつつハロプロには残る)メンバーもいたから、「ハロプロ内の人事異動」的な色彩も強い。

モーニング娘。の道重さゆみ(右)と鞘師里保
=2012年12月モーニング娘。の道重さゆみ(右)と鞘師里保 =2012年12月
 なのに今回の道重の「卒業」を聞いて私は動揺した。自分が動揺したこと自体に動揺した。2001年(もう13年前だ!)、中澤裕子が卒業したときにモー娘の「終わりの始まり」を感じたが、今回はそれ以来の、でもそれとはまた違う区切りを感じた。

 道重の「滅私」の心がそう感じさせるのだろう。

 2008年ごろからテレビバラエティーに進出した道重は、「自分可愛い」のナルシストキャラと毒舌で知られるようになり、週刊誌の「女に嫌われる女」アンケートで上位にランクインした。

 しかしその背景には「モーニング娘を再び有名にしたい」という気持ちがあったようだ。2011年、バラエティーの企画で「1カ月1万円生活」を送ったとき、道重は最後に「モーニング娘を世間に知ってもらうため」と耐えた理由を涙ぐみながら語っている。

 2013年暮れの「クイックジャパン」誌のインタビューで、道重はこう語っている。

・・・ログインして読む
(残り:約691文字/本文:約1350文字)