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【広島カープが優勝する理由(1)】 好調を支える盤石の投手陣

松谷創一郎 ライター、リサーチャー

 「カープが強いのは、鯉のぼりの季節まで」

 プロ野球ファンの間では、まるで定説かのように伝えられてきたこの話が、今年は覆った。今年のゴールデンウィークもセ・リーグでは3日から11日まで9連戦が組まれたが、カープはここを5勝4敗で勝ち越した。5月15日現在、依然として2位に3ゲーム差をつけて首位をキープしている(編集部注:以下、記録は5月15日現在)。

 先発投手を中5日か6日で回す現在のプロ野球において、9連戦は投手陣の厚みが反映される。たとえば9連戦で中5日をキープするためには、6人の先発投手が必要となるが、5人目、6人目の先発投手となるとどうしても力が劣る。当然このときに有利なのは、層が厚いチームだ。先発の4人目までが充実し、5人目、6人目の実力も大して落ちなければ勝ち抜ける。

大瀬良拡大期待通りの活躍をみせるルーキー・大瀬良大地
 カープがいまだに首位をキープしているのは、やはり投手力があるからだ。前田健太・バリントン・大瀬良(新人)の安定した三本柱に加え、現在は、好調の篠田、新人の九里がローテーションを維持している。

 本来はここに2012年の新人王である野村祐輔が加わっているはずだが、不調のために5月1日に2軍降格となった。野村謙二郎監督が、「2軍で準備している投手と比較したい」とコメントしたとおり、それはファームで好調な他の若手を試すためだった。

 ウエスタン・リーグでも首位をキープしているカープは、福井、小野、今井、戸田、中崎、武内と、次代の先発を担う若手が安定したピッチングを披露してきた。まずはこのなかから福井が昇格して5月7日に先発したが、打ち込まれて即座に再降格となった。14日の先発は、昨シーズン途中に巨人から移籍してきた小野だった。結果は5回3失点とまずまずだった。

 しかし、こうした結果はさほど気にしてはならない。

 思い出さなければならないのは、数年前までのカープなら決してこの程度の不調では野村祐輔を二軍落ちさせるような余裕はなかったからだ。野村は防御率6.84だが、勝ち星は3勝2敗。そのうち2回は6イニングを3失点以内で抑えるクオリティスタート(QS)である。たしかに3試合続けて打ち込まれたが、以前のカープなら決して二軍落ちさせるほどではない。現在、カープは驚くほど余裕のある戦い方をしているのである。

好調を続ける中継ぎ投手陣

 好調な投手陣の実力は、さまざまなデータに表れている。防御率がリーグトップなのはもちろんのことだが、それは接戦において表れている。注目すべきは1点差での勝利が7つ、先制時は17勝2敗という結果である。ともにリーグトップだ(※)。

 これらの結果は、先発陣はもとより中継ぎ投手陣の充実によって支えられている。具体的には、勝ちゲームに登板する中田廉、永川勝浩、一岡竜司、そして抑えのミコライオの4人である。この4人の成績を合計すると、65イニング2/3で自責点は7、防御率は0.96(5月15日まで)と驚異的な結果を残している。試合を観ていても、5回まで勝ち越していれば、残りの4イニングはこの4人が完璧に抑えてくれるという安心感がある。

一岡竜司拡大大活躍の一岡竜司
 このなかでもとくに注目したいのは、もちろんのこと一岡竜司だ。今年、FA移籍した大竹の補償選手として加入した一岡は、まだ3年目の23歳。巨人時代は2年間で13試合15イニング1/3に登板したのみなので、新人王資格も有している。そんな彼が、いまだ17イニングを投げて自責点0(失点1)、防御率も当然0である。一躍、大瀬良と並んで新人王候補に浮上した。

 野球は、やはりピッチャーで決まるのだ。エルドレッドが今年ブレイクしたものの、カープ打線はここ数年は湿りがちだ。しかし、それでも投手陣の充実によってこれほどの結果を残せるのである。

 また、現在のカープを他チームと比べると、圧倒的に主力が若手によって占められていることも特徴だ。これは、2007年の自由獲得枠制度の廃止以降、新人獲得に成功してきたことを意味する。

 そこでの戦略も明確だ。即戦力や有力選手は投手に絞って1位指名し、野手は2位以下かクジが外れた場合に高卒打者を1位指名する。このなかから主力の丸や菊池、堂林、松山といった選手が育っている。つまり、「投手は有力大学生、野手は育てる」という方針が明確なのである。こうして蒔いた種がしっかりと芽を出してきたのである。

カープにとって有利な交流戦 ・・・ログインして読む
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筆者

松谷創一郎

松谷創一郎(まつたに・そういちろう) ライター、リサーチャー

ライター、リサーチャー。1974年生まれ。商業誌から社会学論文、企業PR誌まで幅広く執筆し、国内外各種企業のマーケティングリサーチも手がける。得意分野は、映画やマンガ、ファッションなどカルチャー全般、流行や社会現象分析、社会調査、映画やマンガ、テレビなどコンテンツビジネス業界について。著書に『SMAPはなぜ解散したのか』(SB新書)、『ギャルと不思議ちゃん論――女の子たちの三十年戦争』(原書房)。共著 に『どこか〈問題化〉される若者たち』(羽淵一代編、恒星社厚生閣)、『文化社会学の視座――のめりこむメディア文化とそこにある日常の文化』(南田勝也、辻泉編、ミネルヴァ書房)等。

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