林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト
フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
カンヌ映画祭も、ついにレッドカーペットを丸め閉幕した。今回の最高賞パルムドールは、完成度の高いヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督のトルコ映画『Winter Sleep(冬の眠り)』が獲得。だが筆者は、カナダというより、ケベック出身の”恐るべき子供”、弱冠25歳のグザヴィエ・ドランの『Mommy(マミー)』に完全に心を奪われていたので、受賞結果にはやや失望感もあった。
とはいえ『Mommy』は、一応、審査員賞を受賞。そしてこの賞は、元祖・”恐るべき子供”であり、今や齢83歳となった生きる伝説監督、ジャン=リュック・ゴダールの『Adieu au langage(言語よ、さようなら)』と並んで、同時受賞していたのが印象的であった。
授賞式でドランは感激で目を潤ませながら、映画祭ディレクター、ティエリー・フレモーに向かい、「私を信じ、向き合い、守ってくれて有り難う」と心のこもった謝辞を述べた。
一方、ゴダールは、ドランとは対照的に「カンヌなど知らん」とでも言いたげに、授賞式を欠席。彼の代理で、ゴダール作品を35年も支えてきた大物プロデューサー、アラン・サルドが、やや決まり悪そうに授賞式に出席していた。
もしもこの授賞式にゴダール本人が出席し、新旧の”恐るべき子供”監督の夢の競演が見られたのなら、さぞ盛り上がったことだろう。ゴダールにとっては茶番劇なのだろうが。
ゴダール初の3D映画『Adieu au langage』は1時間10分の小品だ。登場するのは、男性・女性、そして別の男性、スイスの自然に戯れる犬(ゴダールの愛犬ロキシー)などなど。でもパンフにあるように「男女が出会い、愛し合うがもつれ、そして再会し、云々……」という筋書きを追っても、あまり意味がなさそうだ。
壮大な問いや引用、挑発し続ける映像の洪水は、やはりゴダール作品以外の何ものでもない。「私はNOと言うためにここにいる」「皆、もうすぐ通訳が必要になる」と語る女性は、まるでゴダールそのもの。
冒頭から「想像力が
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