2014年08月05日
前回まで、アトピー性皮膚炎は原因がはっきりしないがゆえに、逆にあらゆる要因が原因として語られる病気だということを説明した。このように、あらゆるものが原因として想定されることは、マーケットにとって都合のよいことであるという特徴がある。
私は、日本のアトピー性皮膚炎が、現在のように多くの人が知る病気となったのは、1990年代以降、食品・衣類・民間医療など、アトピー性皮膚炎に関するさまざまなマーケットが掘り起こされたことが関係しているのではないかと考えている。そして、このように病気とマーケットが密接に結びつく現象は世界的には決して当たり前のことではなく、日本のひとつの面白い特徴ではないか、と考えているのである。
アトピー性皮膚炎と聞いて、どんな病気かピンと来ないという人はあまりいないだろう。誰でも、「あぁあの皮膚が痒くなるやつね」というくらいには、この病気のことを知っている。
ところが、つい20~30年ほど前までは、日本でもアトピー性皮膚炎という言葉を知っている人はそれほど多くなかったのである。この数十年の間に、アトピー性皮膚炎という言葉は一気に人口に膾炙したのだ。
この背景には、おそらく患者数の増加という要因もあるだろう。確かに、1987年には22万4千人であった患者数が、2011年には36万9千人と、約14万5千人増加している(厚生労働省大臣官房統計情報部「平成23年 患者調査」)。ただし、例えば急性気管支炎も1993年の27万人から、2011年には36万5千人に増加しており、アトピー性皮膚炎とよく似た割合で患者数が増加している(同上)。
それにもかかわらず、急性気管支炎はアトピー性皮膚炎ほど一気に知名度が上がったという印象はない。アトピー性皮膚炎の知名度が上がった理由は、
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