2014年09月13日
ネット書店最大手のアマゾンが、電子書籍の販売条件で出版社を「格付け」し、アマゾンに有利な条件で契約した出版社の書籍を、読者に優先的に紹介する新たな仕組みを導入したことが、朝日新聞(紙版、デジタル版)で報道された。
何も、驚くことではない。
アマゾンは同じ事をすでにアメリカでやっている。キンドル発売前の2年間、アマゾンはアメリカの出版社に新しいデジタル形式を受けいれろとおだて脅し、速やかなデジタル化に応じないところには、サイトにおける検索や顧客への推奨の優先順位を下げると通告した。
アマゾンの「顧客第一主義」の中心は、価格引き下げである。小売業が価格引き下げと利益の両方を追求しようとすれば、仕入れ条件を有利なものにするしかない。アマゾンは、圧倒的な市場支配力を楯に、メーカーである出版社にそれを要求してきたのだ。
何も、驚くことではない。
実は、日本の出版流通業界でも、同種のことは行われてきたと言える。大手出版社は特約店、報奨金などの制度を通じて、有力チェーンに好条件を示し、自社の本を大量に送り込み、店頭の目立つ位置に展示販売してもらってきたからだ。ホームページと店頭の違いはあるとはいえ、旧態依然とした策なのである。
何も、恐れることはない。
出版社は無理な条件は飲まなければよい。アマゾンのホームページで目立たなかったり、顧客に「おすすめ」されなかったらどれだけのダメージがあるか、試してみればよいのだ。
「買うことが決まっている本は、アマゾンで買う」という人が多い。多くの人は、PCやスマートホンなどで簡単に買え、すぐに入手できるからアマゾンを使うのだ。決してアマゾンのホームページで購入意欲をそそられたからではない。
書店の店頭で商品を探し、現物をチェックした上で購入はアマゾンから、という人も多いと聞く。だとしたら、ホームページでの好位置や、「おすすめ」の優先順位は関係ない。
何も、恐れることはない。
このニュースは、書店にとって朗報と言ってもよいかもしれない。日本上陸10余年、破竹の快進撃で既存書店をなぎ倒してきた怪物が、遂にその弱点を露呈し始めたとも言えるからだ。
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