2014年09月13日
出版業界が騒がしい。先ごろ日本では、アマゾンが電子書籍の販売条件に応じ、出版社の格付けを行うというニュースが大きく報道された。有利な契約条件を受け入れた出版社の本を優先的に勧める仕組みを導入したことが、批判の的となった。
フランスも揺れている。かねてアマゾンは、業務の拠点を法人税の安いルクセンブルクに置きながら、着実にシェアを伸ばし続けてきた。当然ながらアマゾンは、町の本屋を脅かす存在として、かつ読書文化の根幹を変容させる存在として警戒感を持たれている。
そしてついに政府は動いた。今年6月26日にインターネット通販会社に対し、値引きした書籍を無料で配送をすることを禁じる法律、いわゆる“反アマゾン法”を可決、7月8日に施行に踏み切ったのだ。
この法律が可決された直後、日本では「さすがフランス、文化大国らしい決定だ」風のわりに温かい論調が多かったと思う。
現在、法律が施行されてから、約2カ月が過ぎたところだ。果たしてフランスの出版業界に、ポジティブな変化を起こしてくれたのだろうか。
まず書籍の値引きに関して言えば、フランスの場合は、当時の文化大臣ジャック・ラングの名前を拝借した“ラング法”に端を発している。
具体的には「最大20%割引」を掲げ始めたフナックから町の本屋さんを救うため、書籍の値引率を「上限5%」に定めたものである。
そして2000年にフランスに上陸したアマゾンは、法律で認めれていたこの「5%の割引」と、「無料配達」を組み合わせながら、徹底的な薄利多売方式でシェアを拡大してきた。
現在アマゾンは、ネットとリアルを問わなければ、フナックとハイパーマーケットのチェーン店E・ルクレールに次ぎ、国内第3位の書店の地位まで登り詰めた。フランスの調査会社Xerfiによると、アマゾンは今後も順調に勢力を伸ばし続け、2017年までには第1位になると予測している。
一方、フランス文化省・通信省のサイトが掲載していたデータによると、2013年に、アマゾンに限らずインターネット経由で購入された書籍の割合は、全体の購入率の18%(うちアマゾンは70%)に過ぎなかった。一瞬、「インターネットは全体の5分の1以下か、まだ大したことないな」と思うかもしれない。
だが
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