2014年09月19日
テニスの全米オープン男子シングルス決勝で、錦織圭(24)がクロアチアの強豪チリッチ(25)にストレート負けした。が、日本人選手の四大大会(グランドスラム)での決勝進出は史上初。しかも錦織は、4回戦以降トップ10に3連勝して、全米決勝の大舞台に立ったのだ。
これはまさに日本テニス史上の大事件であり、錦織は今回の決勝進出によって、日本人テニス選手としては例外的な実力の持ち主であり、不世出のプレイヤーであることを身をもって証明したわけだ(全米オープン開催中、草テニスプレイヤー歴&テニス観戦歴30年以上の私は、映画館通いを少なめにして、全米テニスのTV観戦漬けになっていた)。
実際それは、錦織が準決勝で世界第1位のジョコビッチに勝ったあたりでピークに達し、集団ヒステリーめいた“錦織フィーバー”となった。
もちろん、日本人初の全米決勝進出という空前の快進撃にマスコミが沸き立ち、テニス関係者が色めき立つのは当然だろう。
だがそれにしても、今回の“錦織フィーバー”は度を越えていた。
錦織準決勝突破の記事が大手新聞の第一面トップをでかでかと飾り、決勝前日のTVワイドショーでは、元女子プロテニス選手が涙ながらに錦織の活躍をほめちぎった。
また、その番組で別の元女子プロは、自分が生きている間にこんな夢のような事が起こるなんて、と感極まった様子で言いつのり、挙句に錦織が優勝する確率は90%以上!と、まるでトランス状態に陥ったかのように高ぶった様子で断言し、有頂天トークを炸裂させた。
正直言って、こうした“応援解説者”のあられもない興奮、ひいては錦織報道一色と化したマスコミの挙国一致的熱狂は、錦織に対する真のサポートから乖離(かいり)してしまい、彼にとっては過重なプレッシャーとなるゆえ、百害あって一利なしだと思う。
“応援解説者”のテンションが上がれば上がるほど、四大大会のトロフィーは錦織から遠ざかってゆく気さえする。
もっとも、くだんのワイドショーで唯一救いだったのは、共演者のスポーツライター・玉木正之だけが、錦織の優勝確率は50%以上と冷静に言い、その場の“大本営発表”的な過熱予想に、やんわりと抗っていたことだ(なお、こうした「応援報道」の見苦しさ、デメリットについては、本欄(「全豪テニス8強入りした錦織圭よ、国を背負うな!」2012/01/31、「ロンドン五輪TV観戦記――「応援放送」の不快さとうっとうしい話題」2012/08/09、「続・ロンドン五輪TV観戦記――オリンピックの『感動』と不健康さについて」2012/08/14)でも触れたが、併読していただければ幸いである)。
そして、ひどく憂うつなことだが、今回もまた極めつきの
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