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応援という病理――全米テニス決勝・チリッチ×錦織戦をめぐる“内向き“過熱報道に物申す(上)

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 テニスの全米オープン男子シングルス決勝で、錦織圭(24)がクロアチアの強豪チリッチ(25)にストレート負けした。が、日本人選手の四大大会(グランドスラム)での決勝進出は史上初。しかも錦織は、4回戦以降トップ10に3連勝して、全米決勝の大舞台に立ったのだ。

 これはまさに日本テニス史上の大事件であり、錦織は今回の決勝進出によって、日本人テニス選手としては例外的な実力の持ち主であり、不世出のプレイヤーであることを身をもって証明したわけだ(全米オープン開催中、草テニスプレイヤー歴&テニス観戦歴30年以上の私は、映画館通いを少なめにして、全米テニスのTV観戦漬けになっていた)。

全米オープンで準優勝し、帰国した錦織圭選手を多くのファンが出迎えた=13日午後、成田空港拡大全米オープンで準優勝し、帰国した錦織圭選手=2014年9月13日、成田空港
 さて、ここでは錦織の快挙についてではなく、今回の彼の活躍をめぐる、マスコミの病的な過熱報道について書く。

 実際それは、錦織が準決勝で世界第1位のジョコビッチに勝ったあたりでピークに達し、集団ヒステリーめいた“錦織フィーバー”となった。

 もちろん、日本人初の全米決勝進出という空前の快進撃にマスコミが沸き立ち、テニス関係者が色めき立つのは当然だろう。

 だがそれにしても、今回の“錦織フィーバー”は度を越えていた。

 錦織準決勝突破の記事が大手新聞の第一面トップをでかでかと飾り、決勝前日のTVワイドショーでは、元女子プロテニス選手が涙ながらに錦織の活躍をほめちぎった。

 また、その番組で別の元女子プロは、自分が生きている間にこんな夢のような事が起こるなんて、と感極まった様子で言いつのり、挙句に錦織が優勝する確率は90%以上!と、まるでトランス状態に陥ったかのように高ぶった様子で断言し、有頂天トークを炸裂させた。

 正直言って、こうした“応援解説者”のあられもない興奮、ひいては錦織報道一色と化したマスコミの挙国一致的熱狂は、錦織に対する真のサポートから乖離(かいり)してしまい、彼にとっては過重なプレッシャーとなるゆえ、百害あって一利なしだと思う。

 “応援解説者”のテンションが上がれば上がるほど、四大大会のトロフィーは錦織から遠ざかってゆく気さえする。

 もっとも、くだんのワイドショーで唯一救いだったのは、共演者のスポーツライター・玉木正之だけが、錦織の優勝確率は50%以上と冷静に言い、その場の“大本営発表”的な過熱予想に、やんわりと抗っていたことだ(なお、こうした「応援報道」の見苦しさ、デメリットについては、本欄(「全豪テニス8強入りした錦織圭よ、国を背負うな!」2012/01/31、「ロンドン五輪TV観戦記――「応援放送」の不快さとうっとうしい話題」2012/08/09、「続・ロンドン五輪TV観戦記――オリンピックの『感動』と不健康さについて」2012/08/14)でも触れたが、併読していただければ幸いである)。

 そして、ひどく憂うつなことだが、今回もまた極めつきの

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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