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 今年初めて釜山国際映画祭BIFFに参加した。1996年にできた映画祭で、1985年に始まった東京国際映画祭TIFFよりも海外ではずっと評判がいいのというので、気になっていた。実際に行ってみて、「東京国際映画祭はこれを目指すべきだったのだ」と強く思った。

 TIFFについてどこが問題かは既に5回連続でここに書いたが(【東京国際映画祭はどこがダメなのか】)、それがほぼすべてうまく行っているのがBIFFのような気がした。

映画の殿堂(撮影=筆者拡大映画の殿堂=撮影・筆者
 まず、釜山という場所がいい。

 大都市ではあるがソウルに比べると小さいし、美しい海岸を持っているのでカンヌやベネチアのような高級保養地の雰囲気もある。

 公式ホテルの海雲台ホテルを始めとして、海に向かっていくつものホテルが並ぶ。

 さらにカンヌ、ベルリン、ベネチア、トロントと同様に専用会場を持つ。

 2011年にできた「映画の殿堂」は、4000人のメイン劇場に加えて4つの劇場がある。それまではTIFFと同じくシネコンを中心に開催していたが、この会場ができて映画祭として華やかさが加わった感じだ。

 作品選定は、プログラム・ディレクターのキム・ジソクのもとに、6人の韓国人プログラマーが並ぶ。さらにアドバイザーとして、英国のトニー・レインズやイラン人で日本に滞在するショーレ・ゴルパリアンなど外国人が加わる。

「映画の殿堂」で観客を誘導するボランティア拡大「映画の殿堂」で観客を誘導するボランティア=撮影・筆者
 それらがカタログの冒頭にすべて明記されているのもTIFFとは違う。誰が選んでいるかはっきりしている。

 彼らの選ぶ基準はHPにも「プログラマーからのメッセージ」に書かれているように「韓国を含むアジアのインディペンデント映画に光をあてること」。

 オープニングはインターナショナル・プレミア(国外初上映=IP)の台湾映画『軍中楽園』で、クロージングはワールド・プレミア(世界初上映=WP)の香港=中国映画『ギャングスターの給料日』。

 どちらも有名な監督ではないが、オープニングのニウ・チェンザー監督作品は、ホウ・シャオシェン製作の極めて質の高い作品だった。TIFFのオープニングがディズニーの『ベイマックス』であることを考えると、その差は大きい。

 「ガラ上映」というセクションは、「特別招待」に近いと思う。チャン・イーモウ、アン・ホイ、モフセン・マフマルバフ、イム・グォンテクの4人のアジアの巨匠の新作が並ぶ。こちらはすべてWPでもIPでもないが、マフマルバフの『大統領』はベネチアで見て傑作だと思った。

 このアジアの巨匠たちへのリスペクトぶりは、TIFFの「特別招待」が正月映画の顔見世上映になっているのとは大違い。

 次に来るのが「アジア映画への窓」で、WPやIPを含む57本のアジア映画を上映する。

 日本からは、塚本晋也監督の『野火』、 ・・・ログインして読む
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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

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