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[3]すべてはお上(かみ)の既得権益のためだった

森巣 博 兼業作家・ギャンブラー

 2004年以降のマカオ、そして2010年からのシンガポールでの大成功を踏まえ、そのうちに日本でもゲーム賭博の場、すなわち「カジノ」が合法化されるかもしれない流れとなってきた。

 「カジノ合法化」にかかわる最近の動きを、ざっとたどってみよう。

IR議連総会に来賓として出席し、挨拶するサントリーホールディングスの新浪剛史社長=2014年10月16日、東京・永田町拡大IR議連総会に来賓として出席し、挨拶するサントリーホールディングスの新浪剛史社長=2014年10月16日、東京・永田町
 国会でカジノ合法化を目指す超党派の「国際観光産業振興議員連盟(通称・カジノ議連)」が立ち上げられたのが、2010年4月のことだった。

 立ち上げ当時は、民主・自民・公明・社民・国民新・みんなの各党から74名の議員が参加している。2014年になると、これが議連の通称を変え参加議員も約220名に増えた。

 じつは2010年の秋の臨時国会で「カジノ合法化」を目指す法案が、議員立法として上程される予定だったのだが、当時の政権党だった民主党の代表選、そして年を明けては3月の東日本大震災・東電福島第一原発事故等があり、上程が遅れに遅れた法案である。

 「特定複合観光施設(IR)の整備を推進するための法案」と名を変え、ついでに議連の通称も「IR議連」(会長・細田博之自民党幹事長代行)となってやっと国会に提出されたのが、2013年12月のこと。「日本国民はバカだから」とする仮説をもし大胆に否定できるとしたのなら、これまで日本でゲーム賭博が公認化されてこなかった理由は、はっきりとしていた。

 すなわち、公営競走賭博とパチンコ業界の既得権益を守るためである。

 なんでやねん、公営競走賭博やパチンコの利権なんて、どうでもええやんけ。

 そうわたしのようにチューサン階級(中学3年生程度の知識の持ち主の意味)の素朴な疑問を発するのは、非国民・国賊というもの。心してください。

 公営競走賭博およびパチンコには、官公庁による利権のシマ(=縄張り)割り、つまり「霞が関の論理」が確立していた。

 競馬は農林水産庁に、競輪は経済産業省に、競艇は国土交通省に、そしてパチンコは警察庁に、といった具合だ。

 日本の公営競走賭博における控除(=胴元の取り分)率は(実質計算で)25パーセント超。パチンコは良心的なホールで8パーセント。ぼったくりのハコ(=店)だと、その控除がいくらになるかわからない。

 これまでの日本では、賭博愛好者たちにそういった無茶苦茶に劣悪な環境が強いられてきた。

 なぜか? お上(かみ)が自分たちの既得権益を守るため、そう定めてきたからである。

 一方、国連に加盟する大多数の国(130か国超)では、ゲーム賭博の場・カジノの存在が法的に認められている。

 公認カジノが採用するゲーム賭博の平均控除率は、どこでも1パーセント前後だ。

 これじゃ、勝負にならない。

 日本でカジノが公認されれば、官公庁およびそれにぶら下がる族議員たちの賭博関連既得権益が一発ですっ飛んでしまう。

 それゆえ、これまでの日本では先進国(OECD加盟国)としてはほとんど唯一(例外はアイルランド)、ゲーム賭博が合法化されてこなかった。

 日本の合法賭博における収奪の仕組みは、拙著『越境者たち』(集英社文庫)をご参照願いたい。

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筆者

森巣 博

森巣 博(もりす・ひろし) 兼業作家・ギャンブラー

1948年生まれ。著書に『越境者たち』(集英社文庫)、『神はダイスを遊ばない』(新潮文庫)、『蜂起』(幻冬舎文庫)、『二度と戻らぬ』(幻冬舎文庫)、『日本を滅ぼす〈世間の良識〉』(講談社現代新書)、共著に『ナショナリズムの克服』『ご臨終メディア――質問しないマスコミと一人で考えない日本人』(ともに集英社新書)など多数。