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[7]10億円以上勝っても博奕を打ち止めない人

森巣 博 兼業作家・ギャンブラー

 自分が小学生のときは、まだ自宅の二階が賭場で、賭場が開かれる日は、なぜか必ず地元の警察官が一階の居間で酒を飲んでいて、子ども心に不思議だと思っていた。

 千葉のやくざ総長の家に生まれ、のちに自身も広域指定暴力団・住吉会の大幹部となった鴻池宋一の証言である(「週刊金曜日」875号)。

 これはわたしの旅打ちの経験とも、ぴたり合致する。

 日本では非合法な経済活動を継続的におこなうつもりであれば、地下社会に仁義を通しておかないと、のちのちややっこしいこととなる。

 ゲーム賭博が公認されれば、暴力団が絡むのではない。

 それが法律で禁止されていたからこそ、暴力団が絡んだのである。

 そして付け加えると、ゲーム賭博が非合法化されているので、警察の利権ともなる(「パチンコ換金・三店方式」の説明も参照のこと)。

 そこを間違っちゃいけない。

数学法則を欺(あざむ)く

 わたしがマカオで、「井川のアホぼん(京都祇園で頭の弱い御曹司を意味する言葉)」こと井川意高・大王製紙前会長の噂を聞くようになったのは、2008年(北半球)秋頃からだったと記憶する。

 それ以前にもマカオに来ていたかもしれないが、話題にはなっていない。

 マカオの大手ハウス(=カジノ)のVIPフロアには、眉の毛1本動かさずに、一手1000万円相当をベットする人たちが、ごくフツーにいる。

 たった数分間の緊張と高揚と愉悦のために。

 日常の感覚を失っている。

 いや、日常の感覚を失わないと、とてもじゃないが太い博奕(ばくち)は打てない。

 当時の「井川のアホぼん」は、大きく行っても一手100万円くらいの打ち手だと聞いていた。

 マカオの荒海には、「鯨(ホエール=超大口の賭人)」たちが潮を吹いている。

 当時の「アホぼん」の打ち方では、それほど目立つ存在ではなかったようだ。

 それからわずか3~4年。

 マカオの大手ハウス・VIPフロアのマックス(Max=一手に賭けられる上限の金額)である4~5000万円相当のベットでは満足できずに、シンガポールのカジノに通いだした。

 シンガポールのMBS(マリーナベイ・サンズ)なら、一手8000万円相当のベットまで受けてくれるからだった。

 井川さんは2~3日は寝ないで打ち続けるほどカジノが好きです。やるのはもっぱらバカラ。たとえ10億円以上勝っていても(中略)止めません。(「週刊ポスト」2012年1月6日号)

 マカオで「アホぼん」を連れ回していたジャンケット(=カジノ仲介)業者の一人・小林愛季の証言である。

 10億円以上勝っていても、

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筆者

森巣 博

森巣 博(もりす・ひろし) 兼業作家・ギャンブラー

1948年生まれ。著書に『越境者たち』(集英社文庫)、『神はダイスを遊ばない』(新潮文庫)、『蜂起』(幻冬舎文庫)、『二度と戻らぬ』(幻冬舎文庫)、『日本を滅ぼす〈世間の良識〉』(講談社現代新書)、共著に『ナショナリズムの克服』『ご臨終メディア――質問しないマスコミと一人で考えない日本人』(ともに集英社新書)など多数。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです