森巣 博(もりす・ひろし) 兼業作家・ギャンブラー
1948年生まれ。著書に『越境者たち』(集英社文庫)、『神はダイスを遊ばない』(新潮文庫)、『蜂起』(幻冬舎文庫)、『二度と戻らぬ』(幻冬舎文庫)、『日本を滅ぼす〈世間の良識〉』(講談社現代新書)、共著に『ナショナリズムの克服』『ご臨終メディア――質問しないマスコミと一人で考えない日本人』(ともに集英社新書)など多数。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
賭博依存にかかわる研究は、ここ40年ほどで飛躍的に進んだ。
ギャンブルに手を染めた人の1%前後は、病的依存に陥る、と言われている。
なにが「病的依存」であるかについては諸説あるそうだ。
本稿における「賭博(ギャンブル)依存(=強迫的賭博あるいはPathological Gambling)」という言葉の使用法は、1980年にアメリカ精神医学会が出版した『精神障害の診断と統計の手引き 第3版』の基準を日本向けに書き換えた、精神科医・田辺等の定義を採用する。
1、ギャンブルのことを考えて仕事が手につかなくなることがある。
2、自由なお金があると、まず第一にギャンブルのことが頭に浮かぶ。
3、ギャンブルに行けないことでイライラしたり、怒りっぽくなることがある。
4、一文無しになるまでギャンブルをし続けたことがある。
5、ギャンブルをへらそうと、やめようと努力してみたが、結局ダメだった。
6、家族に嘘を言って、ギャンブルをやることがしばしばある。
7、ギャンブル場に、知り合いや友人はいない方がいい。
8、20万円以上の借金を5回以上したことがある、あるいは総額50万円以上の借金をしたことがあるのにギャンブルを続けている。
9、支払予定の金を流用したり、財産を勝手に換金してギャンブルに当て込んだことがある。
10、家族に泣かれたり、固く約束させられたりしたことが2度以上ある。
(田辺等 『ギャンブル依存症』 日本放送出版協会)
このうち5項目に該当すれば、「賭博依存症」だそうだ。
「賭博依存」であると自覚しているにもかかわらず、不思議なことに、わたしは3項目しか該当しない。
多分それは、張り取り(=博奕)を生業として選択したからなのだろう、と勝手に解釈している。
3項目しか該当しなくても、前述した、
――感情などが入り込む余地のない、まっさらな快楽。
を知ってしまったのちに、元の世界に戻ろうとする方が無理なのである。
ほら、一度セックスしたら、