2014年12月19日
日本でカジノが合法化されると、「賭博依存症」に陥る不幸な人たちの数は変わらないか、減る。
なぜ、わたしはそう考えたのか?
A)「賭博依存」の研究は、(おそらく例外なく)もっとも「依存」に陥りやすいギャンブルの種目を「マシン系」と指摘する。
すなわち現在の日本の賭博では、パチンコ・パチスロが、これに該当する。
B)通常、手を染めた人たちの1%前後が陥る「賭博依存」のはずなのに、日本には約200万人の「パチンコ依存」の人たちが存在する、と試算されている。これは「パチンコ人口1200万人」の17%弱に該当する。
すなわちパチンコ・パチスロとは、それほど「依存」を誘発するギャンブル種目なのである。
ひと昔前なら、パチンコ・ホール近くの電柱とか駐車場にべたべたと貼りつけられたサラ金・町金融・ヤミ金融のチラシが、この問題点を明瞭に明確に隠すことなく示していた。
C)他のゲーム賭博が全面的に非合法化されているのに、そんな「危険な(=依存性が高い)」ゲーム賭博のみ、(主に)警察の利権の都合で黙認されている。駅前や主要道路沿いに「危険な」ギャンブル場が1万2000軒も建てられてある。
ついでに書けば、お上(かみ)の利権に関わるゆえ、日本では「賭博依存の研究」が、おそらく意図的に(WHO報告から)30年も遅れてしまった。
厚生労働省が「ギャンブル依存症」に関する調査を開始したのは、なんと2007年になってからである。
しかも警察が発表する「自殺原因分類」に、まだ「パチンコ・パチスロ」という項目は含まれない。
おそらくその数が膨大すぎて、発表できないのだろう、とチューサン階級(中学3年生程度の知識の持ち主の意味)に属するわたしは邪推する。
本連載の冒頭で紹介した「日本国民はバカだから」とする仮説を大胆にも否定できるとするのなら、そんなことが、はたして「民主国家」で許されていいものなのか?
D)前述したように、カジノが公認されれば、パチンコ・パチスロ(良心的なホールで控除率8%)や公営競走(競馬・競輪・競艇・オートの控除率25%超)といったボッタクリ賭博の悪環境から、合法ゲーム賭博(平均控除率1%前後)へと、賭博愛好者たちの民族大移動が起こる。
控除率が低い賭博とは、すなわち打ち手の側に勝利する可能性が高い賭博である。
先に紹介した「賭博依存症」を診断する質問内容が将来的にも不動だと仮定したら、すると論理的には日本で「賭博依存症」に陥る不幸な人たちの数は、ずっと減るはずだ。
おまけに、パチンコからカジノが採用する(スロット・マシンではなくて)カード・ゲームに鞍替えする賭博愛好者たちが増えれば(これは確実にそうなる、とわたしは予測する)、専攻種目の変更によって「賭博依存症」に陥る人たちの数は、もっともっと減少する。
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください