メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

[10]神はダイスを遊ばない

森巣 博 兼業作家・ギャンブラー

 日本でカジノが合法化されると、「賭博依存症」に陥る不幸な人たちの数は変わらないか、減る。

 なぜ、わたしはそう考えたのか?

常習賭博の疑い、仙台・青葉区の店経営者逮捕で。捜査員は店内にあったゲーム機を調べた=仙台市2011拡大常習賭博の疑いで、捜査員に調べられるゲーム機(宮城県仙台市、2011年)。カジノができればこういうことも減っていく?
 以下が根拠である。

A)「賭博依存」の研究は、(おそらく例外なく)もっとも「依存」に陥りやすいギャンブルの種目を「マシン系」と指摘する。

 すなわち現在の日本の賭博では、パチンコ・パチスロが、これに該当する。

B)通常、手を染めた人たちの1%前後が陥る「賭博依存」のはずなのに、日本には約200万人の「パチンコ依存」の人たちが存在する、と試算されている。これは「パチンコ人口1200万人」の17%弱に該当する。

 すなわちパチンコ・パチスロとは、それほど「依存」を誘発するギャンブル種目なのである。

 ひと昔前なら、パチンコ・ホール近くの電柱とか駐車場にべたべたと貼りつけられたサラ金・町金融・ヤミ金融のチラシが、この問題点を明瞭に明確に隠すことなく示していた。

C)他のゲーム賭博が全面的に非合法化されているのに、そんな「危険な(=依存性が高い)」ゲーム賭博のみ、(主に)警察の利権の都合で黙認されている。駅前や主要道路沿いに「危険な」ギャンブル場が1万2000軒も建てられてある。

 ついでに書けば、お上(かみ)の利権に関わるゆえ、日本では「賭博依存の研究」が、おそらく意図的に(WHO報告から)30年も遅れてしまった。

 厚生労働省が「ギャンブル依存症」に関する調査を開始したのは、なんと2007年になってからである。

 しかも警察が発表する「自殺原因分類」に、まだ「パチンコ・パチスロ」という項目は含まれない。

 おそらくその数が膨大すぎて、発表できないのだろう、とチューサン階級(中学3年生程度の知識の持ち主の意味)に属するわたしは邪推する。

 本連載の冒頭で紹介した「日本国民はバカだから」とする仮説を大胆にも否定できるとするのなら、そんなことが、はたして「民主国家」で許されていいものなのか?

D)前述したように、カジノが公認されれば、パチンコ・パチスロ(良心的なホールで控除率8%)や公営競走(競馬・競輪・競艇・オートの控除率25%超)といったボッタクリ賭博の悪環境から、合法ゲーム賭博(平均控除率1%前後)へと、賭博愛好者たちの民族大移動が起こる。

 控除率が低い賭博とは、すなわち打ち手の側に勝利する可能性が高い賭博である。

 先に紹介した「賭博依存症」を診断する質問内容が将来的にも不動だと仮定したら、すると論理的には日本で「賭博依存症」に陥る不幸な人たちの数は、ずっと減るはずだ。

 おまけに、パチンコからカジノが採用する(スロット・マシンではなくて)カード・ゲームに鞍替えする賭博愛好者たちが増えれば(これは確実にそうなる、とわたしは予測する)、専攻種目の変更によって「賭博依存症」に陥る人たちの数は、もっともっと減少する。

・・・ログインして読む
(残り:約1293文字/本文:約2483文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

森巣 博

森巣 博(もりす・ひろし) 兼業作家・ギャンブラー

1948年生まれ。著書に『越境者たち』(集英社文庫)、『神はダイスを遊ばない』(新潮文庫)、『蜂起』(幻冬舎文庫)、『二度と戻らぬ』(幻冬舎文庫)、『日本を滅ぼす〈世間の良識〉』(講談社現代新書)、共著に『ナショナリズムの克服』『ご臨終メディア――質問しないマスコミと一人で考えない日本人』(ともに集英社新書)など多数。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです