崩れ落ちる道重さゆみに、「巨人の星」を見た
2014年12月20日
アイドルは音楽ジャンルの一つとして、すっかり定着した。
私はこの1年でアイドルだけで日本武道館に7回、横浜アリーナに3回行った。
週末ともなれば、都内のあちこちのライブハウスでイベントが開かれる。入場料は2~3000円前後、数十組が10~15分単位で交代で登場する。カラオケだから転換は早い。
アイドルもオタクも、一日で複数のイベントをかけもちする。これまでなら、ロックなどほかのジャンルに行っていた「歌いたい女子」がアイドルを志しているようだ。
だから音楽もメタル、パンクなど様々、「暴動系」「中二病ユニット」などと名乗るグループもある。客席ではオタ芸とモッシュやツーステップが一緒に展開されることもある。
1)モーニング娘。'14(11月26日、横浜アリーナ)
2)BiS(7月8日、横浜アリーナ)
3)@JAM EXPO(8月31日、横浜アリーナ)
4)THEポッシボー(11月16日、中野サンプラザ)
5)LILIUM~リリウム 少女純潔歌劇(6月5日、サンシャイン劇場)
1)ステージ上で崩れ落ちる道重さゆみを見ながら、「巨人の星」の結末を連想していた。道重は「カワイイ」に殉じたのではないか。
モーニング娘に歴代最長の12年間在籍した道重さゆみの卒業コンサート。異変は開演1時間後に起きた。
道重の足がつって動けなくなったのだ。ブーツからスニーカーに履き替え、一度は回復したかに見えたが、その後も何度か立てなくなり、「(照明を)暗くしてください」と求める場面もあった。
道重を「カワイイのアスリート」と呼んだのは、ハロオタを描いたコミックエッセーを手がける劔樹人だ。
確かに卒業直前の道重のかわいさは妖艶の域にまで達していた。モーニング娘は週末ごとに昼夜2公演のコンサートがあり、この数年はダンスが激しくなっていた。
かわいさを維持しながら、これらの仕事をこなすのは容易ではないだろう。以前から道重は雑誌インタビューで「身体が痛い」などともらしつつ、「モーニング娘のためなら寿命が縮んでもいい」と言っていた。
腕に負担がかかるのを承知で大リーグボール3号を投げ続けた星飛雄馬のように、道重は「カワイイ」に殉じたのではないか。卒業後、道重は無期限休養を続けている。芸能界には戻ってこないように思えてならない。
メンバーには迷いがあったと思うが、道重を残して全員が移動した。後輩たちを遠くから見守る道重、という演出だと思っていたのは私だけではなかったようだ。
さらに道重と新リーダー譜久村聖(ふくむら・みずき)のデュエット曲の直前、譜久村はきびすを返して道重の元に駆け戻った。
先日、譜久村にこのときのことを聞けたのだが、スタッフからの指示は届かず、いずれもメンバー自身の(しかも互いに会話できない中での)判断だったという。道重が自分の身を賭して後輩に与えた試練だったようにも見えた。
2)全裸PVやメンバー同士の対立を煽るなど「お騒がせ」で知られたグループの解散コンサート。
それまで、最大で1000人規模の会場でしかやってこなかったのが、1万人以上入る会場での公演。2000円の「貧乏人向けチケット」を出すなどしていたものの、果たして埋まるのか、と思っていたのだが、埋まっていた。
会場前にはファンの手により、メンバーの「遺影」を掲げた献花台が置かれた。
幕開け、マネジャーとプロデューサーの男2人がなぜか「We Will Rock You」を歌唱。またぐだぐだな展開なのか……と思ったら、本編はMCなし、3分の休憩を挟んで3時間余、48曲を歌い続けるという「歌を聞かせる」展開だった。もともと曲はいいグループなので、やればできるじゃないか、と思った。
終盤、サークルモッシュが起きる曲になると、客席の周回通路を客が走り回った。4年足らずの活動期間だったが、後世に語り継がれるアイドルだったと思う。
3)100組が参加したイベント。
会場の使い方が面白かった。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください