メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

[2014年 美術 ベスト5]

工藤哲巳、高松次郎、赤瀬川原平……おもしろかった前衛作家の展覧会

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

(1)「あなたの肖像 工藤哲巳回顧展」(東京国立近代美術館ほか)
(2)~(4) 順不同
 「ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡展」(渋谷区立松濤美術館ほか)
 「赤瀬川原平の芸術原論」(千葉市美術館ほか)
 「高松次郎ミステリーズ」展(東京国立近代美術館ほか)
(5)「ヴァロットン展 冷たい炎の画家」(三菱一号館美術館)
*そのほか心に残ったのは、「アンディ・ウォーホル展」「バルテュス展」「フォートリエ展」「菱田春草展」「松林桂月展」「下岡蓮杖展」「中村一美展」など

 2014年は何といっても、1960年代から活躍した日本の前衛美術作家たちを扱った展覧会が抜群におもしろかった。

 工藤哲巳(1935-1990)、ハイレッド・センターの高松次郎(1936-1998)、赤瀬川原平(1937-2014)、中西夏之(1938-)はみな同世代。10歳になるかならないかの時期に敗戦を迎えた彼らが、「美術」という権威や制度に正面から立ち向かってゆく多様な姿の軌跡は、今見ても十分に刺激的だった。

4つのカタログ拡大「赤瀬川原平の芸術原論」展などのカタログ
 10月26日に赤瀬川原平が亡くなり、偶然にもその個展が2日後に始まった。

 さらにそのかつての同志の高松次郎の個展も12月に始まった。

 2月に「ハイレッド・センター」展が開催されたことを考えると、まさに彼らの総括の年となった。

 学芸員の情熱が伝わってくる分厚い4冊のカタログ(=写真)をめくりながら、彼らのことを考えたい。

 この4人では、工藤哲巳が一番興味深く思える。

 初めて彼の作品をまとめて見たが、その発想の射程の大きさに驚く。

 初期の「インポ哲学」シリーズなどの人間の身体にこだわった作品から、コンピューター、原爆、環境汚染などを生み出した20世紀社会やひいては西洋近代そのものを批判する作品に至る。

 とりわけパリに行ってからのパフォーマンスや目玉を使ったオブジェ、箱の中に閉じ込められた身体は興味深い。人間をあえて醜悪に見せながらも、そこにはなぜか美しい色彩があり、空間のリズムがある。

 あるいはヨーゼフ・ボイスを思わせるような哲学的オブジェ。檻や鳥籠に閉じ込められたお化けのような生命体は、赤や青の派手な色に塗られている。

 1980年代ころからはおどろおどろしさがなくなり、洗練度が増してスマートな鳥籠のような作品が並び、そして最後に極彩色の糸を巻きつけたような作品になる。

 彼は、あらゆる欺瞞が許せなかったのだろうと思う。人間や動物に隠された醜さを暴き、放射能や環境汚染といった文明の悪を告発する。普段平和そうに満足に暮らしている日本やフランスの人々に、あえて醜い真実を見せつけた。

 ところが醜いはずのものが、工藤の手にかかると、なぜか魅力的な色彩と形になってしまう。その矛盾を生き続けたのだと思う。

 工藤に比べたら、ハイレッド・センターの歩みは軽やかだ。

・・・ログインして読む
(残り:約1856文字/本文:約3048文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

古賀太の記事

もっと見る