アナ雪、松田聖子……女声がいいです。
2014年12月24日
年の瀬。なんていうかこの、世界とソリが合っていないんだな、最近。自分が考えていることと、世間の感じていることの、波長がまるっきり合わない。
数字でそれが、如実に出てしまう。まじ? あんたら、こんな詐欺師みたいな「この道しかない」男を信じてんの? 気はたしかなの? この道はいつか来た道、だよ? 頼むからうそだと言ってくれ。
まあでも、「選挙結果」という数字で、如実に出ちゃってるんだから仕方ない。自分は、世間とうまくやっていない。認める。
こういうときは、冬ごもり。テレビなんかつけない。新聞も読まない。好きなCD(レコードの方がもっといい)をかけて、一杯ひっかけて、詩でも読んで、早寝しちゃうんだ。そうして、そんなときの歌は、女声がいいです。男は、くだらない。
(5)「アナと雪の女王」神田沙也加、松たか子ほか
なにも女性ボーカルばかり聴いていたわけではないが、2014年、女性が書いて女性が歌った曲といえば、日本も席巻したこの映画のサウンドトラックを除いて語ることに、意味はないだろう。
「ありのままの姿見せるのよ/ありのままの自分になるの」(「レット・イット・ゴー」)
なにも怖くない、もう自由なのよ。なんでもできる、どこまでやれるか、自分を試したいの。
これを前提のない自己肯定ととるならば、世の中にすでに十分すぎるほどあふれている、腐れJポップの、いち変種といっていい。
しかし、「アナ雪」の主要な登場人物のお姫様2人は、いままでのディズニーアニメと決定的に違い、王子様の手助けなく、自らの力で幸福をつかみとる。歌のメッセージを“深読み"し、同性愛の告白と解釈する余地もそこに生じる。
その正否は、しかし、どっちでもよく、自己解放に「白馬に乗った王子様」はもはや必要でなくなった事実を押さえれば、それでよい。
英語のオリジナル・サウンドトラックももちろんいいんだが、日本語吹き替え版の感じがよい。妹アナ役の神田沙也加がのびのび。「とびら開けて」など、ライトなレゲエ調から朗々としたデュエットになって、はつらつ。
姉のエルサ役の松たか子も、声量が必要な難曲の「レット・イット・ゴー」を果敢に歌いこなしている。そりゃ、レコーディング・テクニックで切り貼りしてるんだけど、それを含めて、だ。声の色つやが、この人の値打ち。
(4)「Dream&Fantasy」松田聖子
「あなたと二人だけアイランド/時間も止まってる楽園」「海辺のパラソル きらめく珊瑚礁/太陽の光 波間に跳ねてる」(「Love Island」)
「Dancing Dancing Going to the Wonder Land/ひとときの夢を見させてよ」(「Dancing Dancing!!」)
圧倒的な歌唱力。やる気あり過ぎのアルバムジャケット。80年代ど真ん中サウンド。ほとんど自らの手になる歌詞の、変わらなさっぷりが、いっそすさまじい。
成功するしないにかかわらず、アーティストというのは、自己を更新していくことに本能的な衝動を覚えるものだが、ここにいるのは、自己を更新しないこと、変わらないこと、「聖子ちゃん」のままでいることに命をかけている女性だ。
「時間も止まってる楽園」って、どこにあるんだよそんなもん? 「ひとときの夢を見させて」って、アベノミクスのことなのか? 聴いていると、吐き気さえ催す歌詞世界。全編この調子。
さすがに気づく。これは、
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