トレヴァー・ロイル 著 陶山昇平 訳
2015年01月08日
2014年はシェイクスピアの生誕450周年の年だった。これに合わせてシェイクスピア関係の本がいくつか出版されたのは喜ばしい出来事だが、その一つに加えてもいい収穫である。
ただしもちろん、シェイクスピアそのものを扱った本ではなく、薔薇戦争の歴史を詳細に跡づけたものである。
『薔薇戦争新史』(トレヴァー・ロイル著 陶山昇平訳 彩流社)
もちろんそれらは劇作家シェイクスピアが歴史に基づいて書いたものだが、当然上演用にかなりの創作を交えている。
たとえば「悪王」リチャード3世の姿がその典型的な例である。残虐非道、目的のためには手段を選ばなかった人物、しかもそれにふさわしく肉体的にも異様な姿として描き出され、これがほとんど定着してしまった。
だが、現実のリチャード3世はどうだったのか。これには諸説がある。
おまけにこの男の遺骨が最近発見されたとなると、それをめぐっていろいろな見解が生まれることになり、そのことをきっかけとして、薔薇戦争の時代に目が向けられるようになる。
ところがここでやっかいなのは、イギリス最初の内戦とされる薔薇戦争の歴史が複雑なために、頭が混乱してしまうことだ。
人間関係も複雑怪奇だし、誰が誰やらわからないことも多い。舞台で見ると、なお一層わかりにくい。結局その前に歴史の流れを復習し、人物相関図でも作っておかないと、客席で寝込んでしまうのである。
そこでこの1冊。完璧に整理できたとは言わないが、この本は複雑な歴史と人物関係を明晰に描き出して秀逸。著者の腕前もさることながら、訳者の功績に大いに喝采を送りたい。歴史を読むおもしろさを十分に味わうことができる。高価な本だが、この分野に興味ある読者には必携。
*ここで紹介した本は、三省堂書店神保町本店4階で展示・販売しています。
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