(1)『アデル、ブルーは熱い色』
(2)『グランド・ブダペスト・ホテル』
(3)『her 世界でひとつの彼女』
(4)『6才のボクが、大人になるまで』
(5)『自由が丘で』
番外「映画監督 増村保造」(東京国立近代美術館フィルムセンター)

『アデル、ブルーは熱い色』=2013 - WILD BUNCH - QUAT'S SOUS FILMS - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES - RTBF(Television belge)- VERTIGO FILMS
2014年はなぜか外国映画ばかりを選んだ。邦画には決定的な作品がなかったように思う。
この5本は、いろいろな意味で映画の限界に挑戦する大胆な試みだと思う。
ほかに心に残った外国映画は以下の通り。
『罪の手ざわり』『ある過去の行方』『それでも夜は明ける』『グレート・ビューティー 追憶のローマ』『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』『ジャージー・ボーイズ』『やさしい人』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『ダラス・バイヤーズクラブ』『大いなる沈黙へ』『チョコレートドーナツ』『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』『オンリー・ゴッド』『インターステラー』『ゴーン・ガール』『収容病棟』
『アデル、ブルーは熱い色』は、チュニジア系フランス人のアブデラティフ・ケシシュ監督の日本で初めての劇場公開作品。女性同士の恋愛を、セックスの場面を中心にこれほど正面から描いた映画はこれまでに見たことがない。
見ていると、主人公のアデルの気持ちに同化してゆき、エマを見るたびにドキドキしてしまう。恋愛映画の新しい世界を切り開いたと言うべきだろう。

『グランド・ブダペスト・ホテル』
『グランド・ブダペスト・ホテル』は、才人ウェス・アンダーソン監督が、4つの時代を巡りながら紙芝居のように見せるアクション喜劇だ。現代、1985年、1968年、1932年とスクリーンサイズまで変えて見せてくれる。
中心となるのは1932年で、名優たちが次々に出てきては消えてゆき、まるでバスター・キートンのようなドタバタ喜劇が展開する。昔の映画を思わせる豪華絢爛でノスタルジックなドラマに酔いしれる。
『her 世界でひとつの彼女』は、コンピューターのOSが作り出す女性に恋をしてしまう近未来の風景を描く、スパイク・ジョーンズ監督の作品。
この映画がうまいのは、近未来の風景を現在とはどこか違う感じでノスタルジックに描くところ。全体にくだけたラフな感じの人々や風景の色合いが限りなく愛おしく見えてくる。ありそうな未来をかくも巧みに描いた映画があっただろうか。
リチャード・リンクレイター監督の『6才のボクが、大人になるまで』は、6歳の少年が18歳で大学に行くまでを描いたものだが、何と映画自体を12年かけて撮っている。つまり観客は少年が自然に大人になる様子に、まるでドキュメンタリーのように2時間46分立ち会うことになる。
主人公の少年メイソンJr.ばかりではない。父親(イーサン・ホーク)も母親(パトリシア・アークエット)も姉も、同じ俳優がみんな同じように老いてゆく。人間が老いることが、かくも感動的なものかと驚いた。
『自由が丘で』は韓国のホン・サンス監督作品だが、主演が加瀬亮。
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