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紅白歌合戦を楽しむ三つのキーワード

「80年代」「アイドル」「東京オリンピック」

太田省一 社会学者

紅白の“点”をつなげて“線”で見る

 「NHK紅白歌合戦」(以下「紅白」と表記)はその年だけの“点”で見られがちだ。

 なるほど「紅白」は、年に一度大晦日の夜に繰り広げられる大きな祭りである。そうであるからには思い切り楽しんで一年の憂さを忘れるのが、「紅白」の正しい見方というものだろう。

 2014年も、「ありのままで」の歌とフレーズが流行した映画『アナと雪の女王』や「ようかい体操第一」が子どもたちに大ブームの『妖怪ウォッチ』の特別企画が予定されるなど、祭りにふさわしい盛りだくさんの内容になりそうだ。

 しかし私が思うに、それだけでは「紅白」の面白さを味わい尽くしたとは言えない。戦後まもなく始まった「紅白」も14年で65回目、無視できない歴史の積み重ねがある。

 その中で何度か転機もあった。そして私見では、「紅白」は今、新たな転機を迎えている。

 その意味で、今「紅白」は、大きな流れの中で、言い換えれば点と点をつなげて“線”で見るとますます面白い。

 だから、最近見ていないという方にも、改めて“点”ではなく“線”で「紅白」を見てみてほしい。そこで以下、そのような方々へのガイドにもなるよう、2014年の「紅白」の見どころを三つのキーワードでまとめてみたい。

松田聖子拡大大トリの大役をつとめる松田聖子
 最初のキーワードは「80年代」である。黒柳徹子とタモリがゲスト審査員で出演することが発表されたが、二人は1983年に紅組司会と総合司会をそれぞれ務めた間柄だ。

 それだけではない。14年、松田聖子が初のトリをとる。

 言うまでもなく松田聖子は80年代のトップアイドルであり、「紅白」出場は今回で18回を数える。だが今までトリはなかった。

 かつては演歌系の歌手がトリになることが不文律のようになっていた。

 それゆえ1978年に山口百恵と沢田研二というポップス系の歌手が揃って初のトリになったときは、異例のこととして大きな話題になった。

 14年は白組の嵐も初のトリということで、その時に似ている。ただ80年代を代表するアイドルと現在を代表するアイドルの組み合わせということでは、13年の「紅白」からの流れにも注目したい。

 13年の「紅白」の視聴率(第2部)は44.5%と、過去10年で最高を記録した。その理由の中に、連続テレビ小説『あまちゃん』特別企画の盛り上がりがあったことは間違いないだろう。

 そこでのハイライトは、80年代アイドルの代表格である小泉今日子と薬師丸ひろ子が『潮騒のメモリー』をリレーして歌った場面であった。

 つまり、13年の『あまちゃん』と14年の松田聖子の初トリを並べて見えてくるのは、80年代が「紅白」という番組の時代的な基盤になろうとしている、ということだ。薬師丸ひろ子が、今度は『あまちゃん』中の役としてではなく本人として初出場するというのもその流れが続いていることを感じさせる。

 さらには、同じく80年代を代表するアイドル中森明菜がこの「紅白」で復活することも決定した。これで、「紅白」への世の関心も一気に高まるだろう。80年代色はますます濃くなっている。

 そこには40代、50代といった視聴者層のためということもあるだろう。私自身もそうだが、その層にとってノスタルジーに浸れるのは、もはや演歌ではなくアイドルだからだ。

 ただし、ノスタルジーだけではない。13年の『あまちゃん』企画では、小泉今日子や薬師丸ひろ子とともに能年玲奈らが扮するローカルアイドルも登場した。

 近年、そうしたローカルアイドルを始め、AKB48などのグループアイドルに人気が集まっていることはご存知の方も多いだろう。13年既に、80年代アイドルは、現在のアイドルブームとつなげられていたのである。

 そこで二番目のキーワードになるのが「アイドル」である。 ・・・ログインして読む
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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)。最新刊は『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)。

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