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必見!ティム・バートン『ビッグ・アイズ』(下)

卓抜な色彩設計、マーガレットと夫の微妙な関係、当時の時代背景など

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 『ビッグ・アイズ』では、光線設計や色使いも秀逸で、室内のマーガレット/エイミー・アダムスは、しばしば軟調のぼうっとかすむような逆光ぎみの光の中に映し出され、またカーテンや床や壁の色もおおむね、ピンクや薄黄色や淡いグリーンなどの明るいパステル・カラー/中間色であり、少しだけ現実離れしたメルヘン調のテイストを出している(スモークが焚かれている場面も頻出)。

 とりわけ、絵を描くことに没頭するあまり疲労困憊したマーガレットが、床に横たわって眠っている場面では、薄明るく柔らかい光が、仮死状態にあるかのような彼女をもやのように包みこんでいて、はっと見入ってしまう。

ティム・バートン拡大ティム・バートン監督
 ところで、エイミー・アダムス扮するヒロインの実在のモデル、87歳のマーガレット・キーンは、今も毎日のように絵を描き続けているというが、彼女は映画で描かれた当時(1950年代末~60年代)を振り返って、およそこう語る。

 2000年に他界した元夫ウォルター――結婚10年目にキーン夫妻は離婚――が、彼女の絵やその複製を彼の名義で売ったことには納得がいかなかったが、しかし他方で、自分の絵が60年代初頭に一世を風靡(ふうび)した最大の理由は、元夫のTVのトークショーでの巧みな口上や、マーケティングの才であったことを認めている。

 なお当時マーガレットは、1日16時間も絵を描いたという。

 また彼女の絵を競って買い求めた客の一人に、あの目の大きな女優

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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