講談社 編
2015年05月01日
すてきな恋愛詩のアンソロジー。近頃珍しい本が出た。
吉井勇、島崎藤村、ゲーテにジャン・コクトー。古今東西の名詩(訳詞も多い)を集めたもの。そこに木村伊兵衛のモノクロ写真が加わる。
ハンドバッグに入れて持ち歩き、電車の中でそっと読む、そんな女性がいたらうれしくなる。スマホに取り憑いている人間より遙かにおしゃれだ。
イギリスでは頻繁に詩のアンソロジーが出ていて、就寝前に好きな詩を読んで安らかな眠りにつく人がいるという。
ロンドンの地下鉄は遅れることで有名だが、そんなときに乗客の心を慰めようと、いろいろな詩を掲示する。
それらを1年分集めたものが『地下鉄詩集』と題して書店に並び、これがなかなかの人気だという。いいじゃないか。
しかし、考えてみれば、日本も古来、多くの詩選を世に送り出してきた。『古今和歌集』、『新古今和歌集』、『百人一首』だってあるし、『新体詩抄』も忘れてはなるまい。昔は堀口大学の名訳を読んでいたはず。和歌も、俳句も、漢詩も、訳詩も人びとの心に大きな影響を与えてきた。
このすてきなアンソロジーをきっかけにして、いろいろなジャンルの詩選を出してもらえないだろうか。
コミカルな詩、悲しい詩、言葉遊びの詩、いろいろと思い当たるはずである。
是非おしゃれな装丁で出して欲しいな。和田誠さんなら喜んで絵を描いてくれると思うけど、どうでしょうか。
*ここで紹介した本は、三省堂書店神保町本店4階で展示・販売しています。
*「神保町の匠」のバックナンバーはこちらで。
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