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[書評]『愛のコトバ』

講談社 編

小林章夫 上智大学教授

すてきな愛の詩選、ハンドバッグに入れて!  

 すてきな恋愛詩のアンソロジー。近頃珍しい本が出た。

 吉井勇、島崎藤村、ゲーテにジャン・コクトー。古今東西の名詩(訳詞も多い)を集めたもの。そこに木村伊兵衛のモノクロ写真が加わる。

『愛のコトバ LOVE POEMS』(講談社 編 講談社) 定価:本体1400円+税『愛のコトバ LOVE POEMS』(講談社 編 講談社) 定価:本体1400円+税
 ゆったりとした装丁で、100ページ足らずの瀟洒な造本。

 ハンドバッグに入れて持ち歩き、電車の中でそっと読む、そんな女性がいたらうれしくなる。スマホに取り憑いている人間より遙かにおしゃれだ。

 イギリスでは頻繁に詩のアンソロジーが出ていて、就寝前に好きな詩を読んで安らかな眠りにつく人がいるという。

 ロンドンの地下鉄は遅れることで有名だが、そんなときに乗客の心を慰めようと、いろいろな詩を掲示する。

 それらを1年分集めたものが『地下鉄詩集』と題して書店に並び、これがなかなかの人気だという。いいじゃないか。

 しかし、考えてみれば、日本も古来、多くの詩選を世に送り出してきた。『古今和歌集』、『新古今和歌集』、『百人一首』だってあるし、『新体詩抄』も忘れてはなるまい。昔は堀口大学の名訳を読んでいたはず。和歌も、俳句も、漢詩も、訳詩も人びとの心に大きな影響を与えてきた。

 このすてきなアンソロジーをきっかけにして、いろいろなジャンルの詩選を出してもらえないだろうか。

 コミカルな詩、悲しい詩、言葉遊びの詩、いろいろと思い当たるはずである。

 是非おしゃれな装丁で出して欲しいな。和田誠さんなら喜んで絵を描いてくれると思うけど、どうでしょうか。

*ここで紹介した本は、三省堂書店神保町本店4階で展示・販売しています。
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 年間8万点近く出る新刊のうち何を読めばいいのか。日々、本の街・神保町に出没し、会えば侃侃諤諤、飲めば喧々囂々。実際に本をつくり、書き、読んできた「匠」たちが、本文のみならず、装幀、まえがき、あとがきから、図版の入れ方、小見出しのつけ方までをチェック。面白い本、タメになる本、感動させる本、考えさせる本を毎週2冊紹介します。目利きがイチオシで推薦し、料理する、鮮度抜群の読書案内。