お店も、社員の生活も、お客さんも…、身柄を拘束されてどう守るのか
2015年05月05日
北原 逮捕前に警察の呼び出し状が届いたんです。それでびっくりして村木一郎弁護士に相談すると、「最悪の場合、逮捕もあり得ます」と言われていました。じゃあ逮捕された場合、どう闘うか。村木弁護士が3つのメニューを用意してくれた。
1、わいせつではないと闘う 2、わいせつだと認めて闘わない 3、私はわいせつとは思わないけど、警察がそう言うなら争いません、と緩く闘う。「緩く闘う」という選択肢は目からウロコだったんですけど、それが一番現実的でした。
竹信 日本人って、「闘う」となると、きつく闘うことをイメージしがちですよね。たとえば完全黙秘するとか。でもね、闘い方って、それだけじゃないでしょう。
北原 女性が主体的に性を楽しむために場をつくったわけですけど、そういう場を守る、ということも、私には現実的な闘いでした。だってアダルトグッズショップを潰すのなんて、警察にしてみればとても簡単ですから。
竹信 労働問題なんかを学生に教えていると、「僕は勇気がないから闘えません」なんて言うんです。でも私は「闘わなくていいから、働くルールを知っていなさい」とまず言うの。労働法とか、本来は身を守れるものがあるということをきちんと知っておいて、闘わなくちゃ生きていけないと思ったときに、それを取り出せるようにしておけばいいんだから。知っているだけで、闘うことの第一歩になるんですよ。
北原 そうですよね。
竹信 ブラック企業とか、ブラックバイトとか、若者の労働問題に取り組んでいる若者たちによるNPOがあるんですけど、そこでは「我慢する」「闘う」「逃げる」の3つの方法があると言ってるの。北原さんのおっしゃる緩い闘い方と似ているでしょう?
北原 確かに似てますね。
竹信 「闘う」というのは、弁護士やユニオンを味方にして、会社としっかり対峙する。「我慢する」というのは、会社でひどい目に合ってもとにかく耐える。「逃げる」は、とてもしんどい状況で、でも闘う自信はない、かといって我慢していたら過労死してしまう。
だったら会社をやめる、会社を休む、つまり逃げると。この3つ目の選択肢は、日本社会ではあまり推奨されてこなかったし、意識もされてこなかったけど、でもこれも闘い方のひとつ。すごく有効に使えると思ったの。
北原 私、ろくでなし子さんが初めに逮捕されたとき、「私だったら闘わない」と周りに言って、驚かれたことがありました。お店もある、社員の生活もある、お客さんもいる。
そもそもが、アダルトグッズショップを始めたのは、女性が安全に性を楽しめることをしたかったわけだけど、アダルトの仕事を、保守的な社会でやり続けるだけで、とてもストレスを感じています。そういう意味で、場を守ることも闘いだと想っていました。
でも、この件では警察とは闘わないよ、と言うとがっかりされました。竹信さんがおっしゃるように、「闘う」ということは、逃げずに勝負することで、それが立派な行為であると思っている人が多いんだなぁ、と思いました。
竹信 じゃあ、認めたら、逃げたら、みんな負けなの? って思いますけどね。私はだらしないので、拷問されて痛かったら、
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