「雅子妃バッシング」に並ぶ戦後皇室報道のエポックに
2015年06月11日
ほかに適当な呼称がないので、ここでも「佳子さま」という敬称を使うが、皇室について文章を書く時はいつも書き方について悩む。
皇族に対して条件反射的に「○○さま」と敬称をつけるのに何の疑問も躊躇も感じなくなったら終わりだと思うのだが、ともあれ本稿も悩みながらも「佳子さま」という呼称を使うことにする。
今起きている佳子さまフィーバーというのは、もしかすると雅子妃バッシング報道と並ぶくらいに戦後の皇室報道のひとつのエポックかもしれないという予感がする。
言うまでもなく、雅子妃バッシングとは、適応障害という状況に彼女が置かれたのを機に、家族を守ることを優先する皇太子一家に対して、皇室の伝統を優先する守旧派からの攻撃だった。
皇室報道というのはソースが限られているために、情報を意識的に流す側の意向に左右されやすい。「公務よりも娘を大切にする雅子妃」や「そういう妻に引っ張られる皇太子」に対して、容赦ない非難が浴びせられてきたのが、ここしばらくの週刊誌の皇室報道だった。
そういう皇室報道の基本的な枠組みを変えてしまったのが、この春以降吹き荒れている佳子さまフィーバーだ。
もともとネタがあろうとなかろうと女性週刊誌は皇室ものを毎号のように掲載してきたのだが、この春以降、明らかにウエイトが大きくなった。
いささか驚いたのは、例えば『週刊現代』5月2日号だ。
特集の見出しが「佳子さまを見た、話した、一緒に食事した!」。
読む方が気恥ずかしくなるようなアイドル誌ふうなのだ。
学内のカフェでランチタイムに佳子さまを見たという学生は、彼女が食べたのはイチゴ味のカップヨーグルトだった、とコメントしている。
誌面には「眞子さまが召し上がったパンケーキ」なるものの写真も掲載されている。どうしちゃったの『週刊現代』、という感じだ。
週刊誌のフィーバーが頂点に達したのが、5月15・16日に行われたICUの新入生の合宿行事「リトリート」だった。
多くの週刊誌が現地に押しかけたらしいのだが、これまた驚いたことに望遠レンズを使った隠し撮りで、佳子さまが学友たちと普段着でソフトクリームを食べる様子などが撮れてしまったらしい。
翌週の週刊誌はほぼこのネタを扱っているのだが、独自の写真が1枚も載っていない『週刊文春』と、写真をふんだんに載せた『フライデー』『フラッシュ』などとではやはりインパクトが違う。
そんなに自由に写真が撮れてしまうなら恐らくどの週刊誌もカメラマンを派遣したはずだが、
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